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No-Mark Stall *




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隔てられるふたりに7つのお題 / 7.それで満足しろというのか | 2006年05月28日(日)
見つめる。目が合う。
名前を呼ぶ。答える。
髪に指を絡める。くすぐったげに身をよじる。
手をつなぐ。笑いあう。
抱きしめる。

望むのはただともに在ることだけ。
満たされるのはそのときだけ。

*

楽しげな笑い声が耳を打つ。
何気なく振り返ると、おそらくは成人を迎えたばかりと思われる少年と、同い年ぐらいの娘が中庭で朗らかに談笑している姿が目に映った。
「……リーオ?」
「いや」
立ち止まった彼を訝しむ友人に軽く首を振り、リーオはゆっくりと歩き出した。
「……」
その様子をじっと眺めていたルーベルに、今度は彼が怪訝な視線を向けた。
「私がどうかしたか?」
「うん、いや、随分ゆっくり歩くようになったと思っただけだ。前はこっちが置いていかれるかと思うくらい早かったような気がしていたが」
変わったな、と呟く友人の声は少しだけ沈んでいる。
宮廷から追放されていた間の彼の苦労を慮っているらしいルーベルの肩を軽く叩き、リーオは意識して歩調を速めた。


緊張を強いられる生活から離れていたせいか、久々の腹の探り合いに重い疲れを覚え、彼は深く溜息をついた。
この自分の部屋でさえ、本当にくつろぐことはもう出来ない。

耳に留めた、あの見知らぬふたりの笑い声が意識の淵でさざめき続けている。親しげで楽しげなそれは、聞いていてとても微笑ましく、そして微妙に不快になるものだった。
かつて手にしていたものを突きつけられることは何とつらいことか。
内で渦巻くどす黒い何かを自覚しつつ、彼はまた息をついた。

彼女はどうしているだろうか。気を抜けば思考はいつもそちらに向かう。
命果つるそのときまで、ともに歩いていくのだと、確証なく確信していたあの頃がひどく懐かしかった。

やがて彼の口元に、僅かに歪んだ笑みが浮かぶ。
なりを潜めていた凶暴な一面が首をもたげる。それを止めるものは何ひとつ、今の彼にはない。
「……ですが、ええ、私はこのままで終わらせるつもりはない」
奪われたものは全て取り戻してみせよう。

自分が満たされるのは彼女と共にあるときだけだと知っている彼は、その牙を静かに研ぎ始めた。

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非常に物騒な終わり方で申し訳ありません。ていうかお題消化してるか微妙だ。
気付けば熱愛度と凶暴度がほぼ比例するキャラたちばかりなことに気付いて今からどんよりしております。カップル引き離しすぎたか。

あまあまらぶらぶは読む分には良いのですが書こうとすると自分にダメージがくるのできついことが身に染みたお題でした……(どうせ懲りずにそのうちまた何か同じようなことをやると思いますが)。

しかし。近頃というか前から薄々思ってはいたんですが、私の書く男は一歩間違うとストーカーになりそうなアレな輩か変態かへたれしかいないような気がしてきました。いやすぎるマンネリだなオイ。どこかに格好イイ男はいないのか。


隔てられるふたりに7つのお題 / 7.それで満足しろというのか
[ 配布元 : TV ]
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