ゼロの視点
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2002年11月18日(月) 満月

 ふと窓から夜空を眺めてみると、満月・・・・・。なるほど、どうりで意味不明に私の血が騒いでいるわけだ。

 自分の仕事のことだけでもストレスが多いのだが、現在夫がリストラの危機にあることで、様々なストレスが我が家では交錯している。個人的に彼がリストラされても、生活はなんとかなっていくと思っているので、極端な不安というものが未だにない。

 しかし、だ。どういう条件で夫が会社を去るか?、ということが最大の焦点。我が家により良い条件となると、会社とのバトルは必至。そして、私はこういったバトルに人一倍燃えるタイプの人間。自分の仕事に燃えなくてはいけないのに、こういったことに燃えていること自体どうかと自問するものの、友人・知人・組合・弁護士などとの会話に参加していると、当事者の夫より燃えている自分を発見・・・・(汗)。

(1)私の父は、職場でライバルおよび嫌な同僚をクビにしている。
(2)私の母は、職場で上司をクビにしている。
(3)私も、日本で在職中上司をクビにしている。

 あらためて文字にしてみると、恐ろしい一家のように見えるが、こういった家庭に生まれた私にとっては、なんでもない普通のこと。長いものに巻かれて、やり過ごすなんてことがまずできないようになっているみたいだ(※わが家族は、別に思想もなにもなく、どこにも所属もせず、ウルトラ・ノンポリ)。それでもここ数年、本当に自分の性格が丸くなったとは思うものの、今回の話は、別。

 さて、夫の勤める会社は、誰もがいい意味でも悪い意味でも知っているフランスのマンモス企業。今年、この会社のバブル経営が完全に破綻したのを契機に、大リストラが始まった。

 こうなる以前から、たまに夫の会社に見学に行ったり、時としてはヘルプとして催事に参加したりしてきているので、この会社のフランス人らの勤務形態は把握している。個人的には、日本の会社のほうがやっぱりキツイというのが本音だ(あくまでも、夫の会社と比較しての話なので、安易にそれを一般化して比較しようとは思っていないので、あしからず)。

 日本の会社は、組合などがあっても、その機能はかなり弱いことにはじまり、なかなか自分の都合を優先できないことは周知のこと。それに対して、夫の会社を観察すると、リストラ寸前の人でも日本人サラリーマンに比較した場合、個人の生活が守られているように思えてならないのだ。とはいえ、たいていのフランス人雇用者は、まず日本などで働いた経験もないから、自分が一番不幸だと思っている(笑)。

 そんなとき、自分の経験、また日本の友人・知人たちが勤務する各会社での「いじめの現状」をフランス人に語ると、たいていのフランス人は、自分が恵まれていることに、ハッと気づく。これは、何度やっても興味深いものだ。私は、どちらの国がいいか悪いかということをジャッジするつもりは毛頭ない。しかし、その違いをフランス人に伝え、フランス人の反応をこの眼で確認するのに興味があるし、また、それを話している最中に、あらためて自分や、自分の国について、ハッと気づく「その瞬間」が好きだ。

 いずれにせよ、よく言われていることとはいえやはり会社においての「個人」の位置は、フランスのソレから比べると、日本のほうが遥かに低いと思う。とはいえ、そういった日本に生まれ育ち、そのシステムの中で働いているのだから、フランス人からは「信じられないこと」も、日本人にとっては口でいうほど「苦」ではないことが多いのだろうことを、あえて付け加えておく。

 幸か不幸か、私自身は「個人」が最低限保障されているフランス社会のほうが向いているようだ。願わくば、フランスで人々に時に嘲笑される「ファンクショネールこと、公務員(それも下っ端)」になりたいと思うぐらいだ。

 年に最低5週間の休みを"取らねばならず"、眼にゴミが入っただけでも医者に駆け込み、医者に1週間の休養が必要と書いてもらい、公的な病欠という名の有給休暇を取ることが出来る。昼休みはタップリと取り、社員食堂には昼からワインなどを飲んでのんびりする人がたくさん存在。おまけにスーツなどで出勤する必要もなし(特に、郵便局)。夏は、ビーチサンダルに短パン&Tシャツという、まるで田舎モノのオーストラリア人旅行客のようないでたちで勤務する人々。そして55歳(職種によっては50歳)で悠悠自適の退職生活がスタートするのだ・・・・。もう挙げたらきりがないほど、こういった素晴らしい特典が盛りだくさんっ!!!!。

 と、こんなことを書いているうちに、日本のサラリーマン世界の最大の利点をふと思い出した。それは「経費という名の甘い汁」だ。これは、フランスのあらゆる会社と比較しても、日本はスゴイ(景気が悪いといっても、ね)。

 知り合いの日本人サラリーマンがたまに、パリにやってくる。パリで一人は寂しいと、私達夫婦を高級レストランに連れて行ってくれる。「なんでも好きなもの頼んでね、どうせ経費だし!!」というのが彼の口癖。私は、経費だろうがなんだろうが、「どうせ人の財布だし(笑)!!」となんでも頼むが・・・。彼自ら曰く“会社一番の売上をほこる営業マン”とのことだ・・・・(汗)。おそらく、現実は“会社一番の経費の使い主”なんだろうけれど。

 さて、夫のリストラ話に戻ろう。幸いなことに夫は有能な弁護士の友人らの援助がいつでも受けられる。ボランティアでアドヴァイスしてくれる人が続出している。役者はとうに揃っているのだ!!。現在のところ、私の意見と弁護士らの意見はほぼ一致していて、あとは、夫本人の闘いへの“やる気”を待つだけである。

 が・・・・・。夫も所詮典型的フランス人。楽しいこと優先の性格なので、問題がそこまで迫っているのに、あまりにもノンキなのだ・・・。おまけに「僕はゼロみたいに、バトルに慣れていないんだ・・」などと言うので、この二ヶ月は何も表立って意見はせず、遠くから見守ることにしている。だから余計ストレスが溜まるのだ。

 日本人の私からすると、夫のフランス人上司のいい加減さなどが丸見え。ゆえにそれを逆手にとって、面白いように責められる点がたくさんある。それがなんちゃってフランス人の夫には、そうは見えない・・・・・・。歯がゆい日々である。

 頑張ってくれ、夫よ!!。

 私も最後の最後まで、口をださないように頑張るから・・・・・(笑)。


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