ゼロの視点
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2003年01月03日(金) 統計と現実

 調査統計のいわゆる“数字”が大好きなフランス人。それらにむけて、必然的に私の仕事も、たくさんの統計結果が必要になってくる。

 ありがたいことに、だいたいの予備調査はネットでできる。これらで調べた数値を最終的に、それなりの公的機関にきちんと問いただせばいいだけ。一昔前だったら、本当にひとつ調べるだけでも膨大な時間がかかっただろうなあ、としみじみと思わざるをえない。いい時代に生まれ、本当にラッキーだと思う。

 そんなわけで、我が家に私がいる場合、そのほとんどの時間をPCの前で過ごすというのが習慣になりつつある。

 調査しているうちに、ふと気になる数値を発見。例えば、日本での自殺者の数値は98年より、3万人を超えている。そして自殺者としてこの数値に含まれるのは、“自殺を試みてから24時間以内に亡くなった人”しか含まれていないということ。

ちなみに、パリを含むIle-de-France(日本で例えれば、東京とその近県)に住む日本人の数が約1万6千人(※日本大使館に在留届を出している人の数)。ゆえに、毎年、この数値の2倍の人が母国では自殺しているということになる。

 一方、WHOの調査では、健康寿命と、寿命の両方で日本が世界一の長寿の国と記載されている。特に、健康寿命というのは、寝たきりとか、そういった人の数を除いて算出した数字であるゆえに、それだけ健康体を維持した人間が長生きしてるというのが、日本ということになる。

 自殺大国であると同時に長寿大国である日本・・・・。健康寿命というあくまで身体面だけを重視した調査ではなく、次回は各国のメンタルへルスから見た寿命というのを、WHOにやってもらいと思った。

 残酷で皮肉な結果だとつくづく思う。健康な身体を保持しながら、自殺を試みてから24時間以内に、その思いを遂げてしまう人が毎年3万人以上もいるという現状。そこに“ソレ”を実施してから、しばらくして亡くなってしまった人や、行方不明というカテゴリー内で、実質的にホームレスになったり、または人知れずどこかで亡くなった人などを加えたら、この数値は膨大なものになることだろう。

 各都道府県警察のサイトを覗くと、身元不明で亡くなった人の遺品写真を展示して、家族からの連絡を呼びかけている。その点数の多いこと・・・。数値だけではないモノが、視覚に強烈に何かを訴えてくる。

 

 さて、日本の人口は、フランスの人口の約2倍強。フランスでは約8000人前後の人が毎年交通事故で亡くなっている。それに対して、日本は約8300人。フランスでの交通事故死者数が多いことを、如実に表す統計値だ。

 交通事故といえば、昨年のニューイヤーパーティー。某映画監督の家でやったのだが、金に対しての考え方の違いがあり、それが原因でパーティー以後は彼との交流を事実上絶っていた私達。

 ある日、テレビを見ながら食事をしていると、彼の写真がニュースに出ているではないかっ!!。ビックリしてテレビ画面にかじりつくと、それは彼の交通事故死を伝えるものだった。自宅から5分のところで、ハンドル操作をあやまり立ち木に激突して、亡くなってしまった。

 新年の挨拶で、「人生は何があるかわからない、だから瞬間、瞬間を楽しもうっ!!」と挨拶していた彼。楽しむことを提唱しながら、彼の眼が全然リラックスしていず、笑っていないのを妙に不思議に思ったものだが、まさかその2ヵ月後に、こんなことになるとは・・・・。

 11月末の友人の交通事故もそうだが、私の身の回りでも、統計結果が示すことが現実に起きている。

 日本では、運転が何よりも好きだった私が、まったくパリでは運転する気にもならない理由の一つがここにある。

 自殺、事故死、病死、いわゆる自然死など、亡くなった本人、そして遺族、それに立ち会う(時には救う立場である)医者、警察関係者等が、それぞれが異なる立場(時には義務)から『死』見つめている。

 そんなことを考えているうちに、『死』というものを把握しきれない私に気づいた。


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