ゼロの視点
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2003年03月22日(土) おのぼりさん

 昼13時すぎのユーロスターにのり、いとこI嬢とロンドン入り。

 北駅に予想以上に早く到着したので、そこで互いにデジカメで写真を取り合う。夫が見送りに一緒に来たのだが、何故か小うるさい母親のように、色々とトンチンカンなアドバイスをしてくる。

「イギリス人は、なんでも盗むんだ。もともと海賊だったし、スリには気をつけろ」などとほざいてくる。夫自身、長いこと英国で暮らしていたこともあるのに。

 そんな小姑化してしまった夫をよそに、ふたりでさっさとチェックイン。はじめてのユーロスター体験にワクワクしているI嬢。それに夫と離れて、妙にワクワクしている私(笑)。

 ユーロスターが発車したらすぐに、自宅であらかじめ作っておいた特製サンドイッチを二人で頬張る。ちゃんと冷やしてきたビール、それにデザートにパパイヤなども持ち込んだので、周りの人が食べている、駅で販売されているショボイランチに大幅に差をつけ、妙に気分がいい。

 Waterloo駅について、久しぶりに例の黒塗りンドンタクシーに乗って待ち合わせ場所に行くことにした。ちょっと出費だが、でも、たまには乗ってみよう・・・、という感じだ。

 待ち合わせのPaddington駅から、本日宿泊させてもらうS氏に連絡しようと、電話ボックスを探す・・・・、が、ない・・・・。昨年ロンドンへ来た時に購入しておいたブリティッシュテレコムのテレフォンカードが使用できる電話ボックスが見当たらないのだ。日本も、フランスも、そしてイギリスも、携帯電話の普及で、どんどん公衆電話が街から消えていく。不便だっ!!。しょうがないので、ホテルのラウンジに入って、やっとのこと公衆電話を発見したものの、自分のカードは使えず、コイン使用となる・・・。

 ようやくS氏と会い、駅からちょっと歩いて彼の家に到着。しばらく話をしたあと、仕事があるS氏を残し、二人で近所を散策することにした。外に出てしばらく歩いているうちに、どう誤魔化しても、頑張っても“異様に寒い”ことに気付く。I嬢は、それでもちゃんと厚手のジャケットを着込んでいたが、私は、すっかり暖かくなってしまっていたパリのままの姿で、ユーロスターに乗り込んできてしまったので、強烈に寒い。手がかじかみそうな寒さ。

 公園を歩いていても、寒い。太陽が地平線に隠れていく姿を見ると、気分的に“お日様までに見捨てられた”ような感じがして、もっと寒くなってくる。おまけにロンドンの公園はバカでかい。寒いが、いったん入ってしまった公園を着たきりスズメの私が、惨めそうな顔して歩いていくのを想像しておくんなまし。

 トイレも兼ねて、暖を取るために喫茶店に入る。ああ、暖かい。アツアツのコーヒーカップを必要以上に両手で必死に握り、凍ってしまった手を解凍していく。このままずうっとこの店に座っていたい衝動に何度も襲われる。とはいえ今まで歩いた分を、もういちど歩かないと家に戻れないので、意を決して店を出る。

 S氏にざっと教えてもらったコスモポリタンなストリートに入ると店がたくさんあったので、ちょっと寒くなると、ショッピングもかねて、あらゆる店に入って、完全に身体が冷えるのを避ける。すると、渡りに船とばかり、洋服のバーゲンがあった。激安っ!!。店中のコートというコートを試着して、とうとう今の自分が求めているものを発見、即購入。10ポンド。値札を取ってもらって、その場から来て外に出ると、あーら不思議、もう寒くないっ!!。

 その後一度家に戻り、S氏の案内で、近所の安くて美味しいというイランレストランへ連れて行ってもらった。バスに乗ると非常に混んでいる。降りるときに、I嬢が変な男がピッタリとくっついてきて気持ち悪かったと言っていた。そんなことも気にせず歩いていると、一人の黒人が私を呼び止める。

??????????。

 振り向くと、彼が私の財布を手にしている・・・・・・。どういうことっ?!?!?!?!。状況がよく読めん・・・・・・・・。そこにS氏がやってきて、英語のままならぬ私らに代わり、やり取りをしてくれているのをボーっと見ながら、やっと何が起こったか?、ということがわかりはじめてきた。

 どうやら、この黒人の説明では、私が財布を落としたらしく、それを拾ってきてくれたらしいとのこと。なのでそれを受け取り、メルシーだの、サンキューだの、英語とフランス語交じりにお礼を行ってみた。そして、彼は去っていった。

 その後、ちょっと気になったので財布の中を見てみると・・・・・・、いつものように、カードだのなんだのがグチャグチャと入っているのでひと安心するものの、もう一度よく見てみると、現金が消えていたっ!!。

 ゲっ!!。スラレタ・・・・・・・・。

 S氏が「ロンドンに長いこと住んでいるけれど、俺の周りでスラレタって言う人、本当にはじめてだっ!!」と言う。わしだって、スリの多いと言われているパリに住んでいて、まったくその危険すら感じず、さりげなく注意を払っていたので、そんなこと聞いたことなかったのにィ・・・・。

 しかし、よくわからん・・・・。いったいどこでだれが私の財布をスッタのか?。そして、どうやって現金だけが抜かれた財布が、ちゃんと私の手元に戻ってきたのか?。財布を戻した黒人がスッタ上に、財布をちゃんと戻すか?。まったくわからん。

 スラレタ金は20ポンド。それだけ。だから、あんまりショックじゃない。おまけに、愛用の財布と共に、10年カードだの、クレジットカードだの、カルトヴィタルだの、重要なものは全部手元に戻ってきたのだし、ね。

 I嬢が「私がスラれるならわかるけれど、なんでゼロが?!?!?!」なんとほざいてくるので、思わず笑ってしまった。ま、それだけおのぼりさんだったのかもしれないし、フランスを一歩出れば、わしのただの観光客でしかなく、全くあてにならないということを、彼女も学んだことだと思う(笑)。 

 そして、ふと思った。北駅で口うるさい小姑になっていた夫が、この話をしたら、“ほーら見たことかっ!!”と得意げになることだろう、と。クそっ!!。


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