ゼロの視点
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2003年08月16日(土) パリ・格安レストランと売り子事情

 仕事に煮詰まったので、日記更新(笑)。

 とはいえ、昨日の昼から夫がひとりでバカンスへ出かけたので、妙に仕事がはかどったことは、気分的にちょっとだけリラックス。夫がいると、ついつい、あとちょっとしたら、飯を作って・・・・、等と考える傾向がある。たとえ、夫が飯を作ってくれたとしても、それは同じで、結局は、自分だけのペースじゃない、他者との共有時間が、時によると完全に私の集中力をぶった切ってしまうことが多々あるのだ。

 一度集中力が切れると、また以前のテンションまでにもっていくのに一苦労する(涙)。せっかく浮かんだアイデアも、いかんせん母国語じゃないので、リズムに乗り遅れると、完全に喪失してしまう可能性もある。ゆえに、メモは頻繁に取っているのだが、時には、メモを見ても、集中力が切れた後なので、なかなか理解できなかったりもする(泣笑)。

 だいたい、夫がいる時は、午後7時前に近所のスーパーへ行くのが習慣なのだが、いないとなると、もう全然時間なんて気にしない私。で、今、猛烈にハラが減って、時計をみると、午後8時半・・・・。ああ、もうスーパー閉まっちゃったよ・・・・。おまけに明日は日曜日。バカンス期間も重なって、近所の食料品屋の99%はアウトだろう。

 実は、現在日本食のことについて書いているのだが、これがツライっ!!。ハラが減っている時など、地獄だ。そして現在、店も閉まり、とはいえ、アタマに中には日本食のイメージが根強く残り、強烈な飢餓感に襲われつつ、ネットで寿司の宅配を探してみた。

 そう・・・・・。夫がいないからこそ、豪遊してみたいのだ(笑)。でも、連日の猛暑もあって、ネタがヤバイんじゃないか?!?!、という懸念がアタマから離れない。それプラス、日本のコンビニだったら、たいした値段じゃなさそうな、寿司が、二千円以上するのがどうも気になってギブアップ。

 確かに豪遊したいが、金払った割には・・・・、というようなウサン臭いものまでに手をつけたくない、というのがセコイ主婦の本音。おまけに、コンビニの寿司でも、シャリはうまい。こんなことを書くと、日本在住の人は驚かれるかと思うが・・・。シャリがどーりよーもない米で、ネタがヤバそうだと思われる状況で、いかほどのまっとうな日本人が寿司を注文できるだろうか?!?!?!。

 でも、寿司食いたいっ!!。助けてっ!!。

 自宅から徒歩1分もないところに、実は日本料理屋が4件もある。看板は日本料理屋と掲げているが、実は全部、非日本人のアジア人による経営。さて、ここまで書けば、在仏の方は、その日本料理屋の実態がよくわかると思いますが(笑)。

 確かに、これらの自称日本料理屋は安い。また、日本料理に似たようなもの、としては廉価で堪能できる面白みも確かにある。でも、本当に日本食を欲してしまった日本人の身体には、かなりギャップがあると申せば、ご理解いただけようか?!?!?!。

 これらの似非日本料理店へ足を運ぶたびに、中国語が得意な夫に店員に話し掛けてもらっている。これが、面白いのだ。夫の向かいにどうみても東洋人らしい人間(実際、私は日本人だが)、多くの店員がそこで、夫が話し掛けた中国語を理解しながら、わからないフリをするのだ。彼らとしては、日本人のフリをしてきたのに、アッサリと中国語で話し掛けられたのがきまづいのかもしれない。

 また、時には、アジア人の顔しているだけで、フランスで生まれてまったく母国語を話すことができない、ベトナム人、タイ人、ラオス人等が含まれている。また別に、中国人でも、北京語はなかなか話せないが、故郷の言葉はOKという人になると、話は別。

 特に、中国・温州からの不法滞在系中国人は、逆に中国語を話す夫を見て、慄きはじめるのだ。見た目だけは、一般的に“真面目”な、おフランス人の夫が中国語を話し、中国のことについてよく知っていると、彼らとしては、不法滞在のことを、いつか追求されるのではないか?!?!、としり込みする、というパターン。

 彼らがしり込みしてくると、必ず私に中国語で話し掛けてくる。そう、私が中国人が否かを確かめるために。が、幸か不幸か、私はまったく耳で中国語を理解できない。そうなると、ますます彼らは焦り始める。そんな彼らに対して、申し訳ないな・・・・、と思わざるをえない。

 フランスでは、10ユーロも満たないレストランに行くと、インド・パキスタン、スリランカ系の花売りや、中国系のガラクタ売りがやって来る。こっちが会話に一生懸命になっていても、向こうは遠慮なく、仕事で商品を各テーブルごとに回って、売りつけてくるのだ。

 ちょっとでも、彼らと会話すると、もう後は長い・・・。パリ右岸の安レストラン常連の私たちは、色々な売り子と出会ってきたが、その中で定期的に顔を合わす中国人女性がいた。彼女はパリに住んでもうすぐ5年になると思う。同郷の夫と、乳幼児を抱え、フランス語もママならず、中国からの渡航費の返済のために、毎晩レストランを一人で回り、ガラクタを販売しているのだ。

 今から3年以上も前に彼女に会ったのだが、その時点で、すでに彼女は骨と皮状態でやせ細り、見た目だけで彼女の生活が、どれほど過酷なものか?、ということを察する。もちろん、ケチで有名なフランス人らは、彼女が毎晩レストランを回っても、ほとんとが無視。そんなところに、中国語が話せるフランス人と、なんとか漢字で彼女とコミュニケーションを取ろうとする日本人のカップルに知り合って、不意にレストランで出くわすたびに、私たちは色々と世間話をしてきた。

 彼女のほうも、私たちを気に入ってくれたのか、本来は売らなくてはいけない商品をプレゼントとして渡そうとする。で、私たちは、それをなんとか説得して買い上げる、という関係が久しく続いていたと思う。

 さて、例の灼熱地獄や、私の仕事もあって、今、思うと彼女には、ここ半年以上、バッタリレストラン乃至は道端で会うことがなくなっていることに、さっき気付いて、ちょっと焦っている。この暑さで、彼女が病気になっていなければいいのだが・・・・・・・。

 ちなみに、彼女は私より数年若い30代前半。なのに、生活は何千倍も私より過酷なのだ。パリに住んでいて、少なくとも日本からの出稼ぎで苦労している日本人に会ったことのない私(自分も含めて)、同じアジアとはいえ、想像を絶した貧富の差というものを目の当たりにした出会いだったと思う。

 フランス語をマスターしたいと言っていた彼女。それに対して、いつでも我が家に遊びにきてね、っと何度も電話番号を渡した私たちだが、今まで一度も彼女からの件で、我が家の電話が鳴ったことはない。彼女は遠慮したのかもしれないし、そこまでするのもな・・・、と考えたのかもしれない。それとも、その余裕すらなかったのかもしれないが、とにかく、ふとまたいつか彼女の姿を見たいものだ。

 じゃないと、やりきれない・・・・・・。
 


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