ゼロの視点
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午前11時頃、朝食を終え居間のソファーでくつろいでいると、突然、夫が『うおお、火事だっ!!』と叫ぶ。夫の目線をそのまま追うと、確かに窓の外で黒煙がもくもくと発生している。
その瞬間から、夫も私も、相手の同意を求める必要もなく、パジャマの上にセーターとオーバーを羽織り、出かける用意をはじめている。根っからのやじうまだ・・・。位置からして、向かいのレストラン"chez Papa"(パパの家)か?、などと思いをめぐらし、表に出てみると、やっぱりそうだった。
最初は遠慮しながら、反対側の歩道から見ていたのだが、知らず知らずのうちに道路を渡り、レストランの前に進み、それでもよく現状がわからないゆえ、黒煙が出ていそうなレストラン裏手まで、思いっきり前進している私達。
火事とはいっても、黒煙がたくさんでているが、炎はみえない。ボヤ程度のものなのだろう。レストラン従業員(ほとんど黒人)がバケツリレーを効率的におこなったおかげで、大きな出火は防ぐことが出来た模様。そこに、ようやく消防車がやってきた。
ボーっと消防員たちの仕事をみながら、従業員や、近所の人らにぼやの様子をきいてみる。どうやら、煙突掃除をきちんとしていなかったようで、それが原因で今回をボヤを引き起こした模様。消防士たちが到着して10分もすると、黒煙がおさまり、今回の騒動も終焉をむかえつつある。
さあ、そろそろ家に戻ろうと隣にいる夫をみると、なんとヤツはデジカメで火事の模様をたくさん撮影している。夫のカメラに向かって笑顔でポーズを決める消防士もいる。しまいには、“ぼくのメールアドレスを送るから、そこにその写真を送ってくれ”という消防士まで出てくる(笑)。
そんな写真撮影風景を見て、一人の男性が私達に近づいてきた。それはこのレストランを含む建物一体と、その近辺のアパルトマン数件の持ち主だった。彼は、今後この火事において、火災保険屋らと色々と交渉したうえで、敷地の一部を貸しているレストランのオーナーとの話し合いでも、写真が必要なので、是非とも夫が撮影したものを後日、メールで送って欲しいというのだ。
そして、もし可能なら、これから彼が指示する場所で、何点かの写真を撮影してもらいたいと延べてきた。そんなわけで、この男性と一緒に火事現場内に入って、現場検証写真を撮影することになった(笑)。はじめて入る"chez Papa"のすす臭い炊事場。へーー、こうなっていたのねぇ・・・・、と好奇心いっぱいで、あたりをジロジロ見渡してしまう私。
この男性は、これらの写真でおそらく一儲けするのだろう。それもあり、非常に私たちに感謝してくる。そして、後日“高級レストラン”(どんなレストランかはしらんが)に私達を招待すると申し出てきた。
すっかり好奇心などを満たして、気分よく家にもどりいざ玄関をいつものように開けようとすると、鍵がない・・・・・・・。
???????????。
実は、先日夫が自分の鍵をパリ上陸中の姑のバックの中に間違って入れてしまい、そのまま姑はレンヌに戻ってしまった。そのため、現在私の鍵しかないのだが、昨日からそれを夫に預けておいたのだ。つまり、本日の鍵の責任者は夫、ということ。
なのに・・・・・・。あのヤロウは、デジカメはきちんと持って出たものの、鍵を持たずに火事を見に行ってしまっていたのだ・・・・・。
この時ほど、マジで夫の首を絞めたいと思ったことはなかった。しかたなく、管理人の部屋へ出向き、鍵屋へ電話してもらうが、鍵屋は鍵屋で忙しくすぐには来られないという・・・・・。長いこと火事現場にいたせいか、すっかり腹は減ってきている・・・・。おまけに、身体もずいぶんと冷え切ってきている・・・・・。このままだと、夫婦仲も冷え切りそうだ。
そんなわしらの現状を見て、管理人はデジカメだけで、あとは鍵も財布も 持っていないわしらに、お金を貸してくれたっ。『このお金で、鍵屋さんを待っている間、どこかのレストランでゆっくりと食事でもしてね』ということだった。ああ、ありがたやっ!!。
そして、ようやく鍵屋がやってきて、あっという間に見事な手さばきでわしらのドアを開けてもらって、家の中に入った時には、もうヘロヘロだったゼロでした・・・・・。
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