ゼロの視点
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2009年02月10日(火) Young@Heart

 新年早々、有楽町にどうしても観ておきたい映画があったので、出かけていった。ずうっと布団にくるまっていたい誘惑に何度もくじけそうになったものの、その日はなんとかそれに打ち勝ち、映画館まで到着することができたのだった。

 その映画は、『Young@Heart(邦題ヤング@ハート/Stephen Walker監督2007年イギリス)』。平均年齢80歳のコーラスグループの日々を追ったドキュメンタリー形式の映画。ボブディランやトーキングヘッズなどのレパートリーをカバーするだけでなく、な、な、なんと、ソニック・ユースのコアな曲までやってしまうから、もうそれだけでぶったまげな、アメリカ・マサチューセッツ州にある老人コーラス隊。

 思えば、母がボケ始めたと思われる2003年からの日々は、そんな親を介護する娘としての視点と、様々な問題を抱えながら置いていく高齢者というものに対峙するライターとしての視点で過ごしてきている私。ゆえに、この映画は双方の観点から決して逃してはならない作品であったのは確かなのだが、実際にはじまった瞬間に、もう感動してしまったほど。

 それほどまでに、命がある限り、その最後の最後まで自分の意思でチャレンジし、歌おうとする彼らのずざまじいエネルギーが、私たちの魂にダイレクトに訴えかけてくるのだ。ドキュメンタリー形式なので、撮影途中に亡くなっていく人も出てくる。

 私が彼らの年齢になったら、ここまで歌っていられるのかどうかすらわからないとはいえ、こうであれればいいなぁ・・・、と思わせるだけの内容だった。

 身体能力が落ちるに従い、徐々に増えていく不安。それらの不安に押しつぶされまくった挙句、日々鬱々と嘆き悲しみ、手を差し伸べようとしてくれる人にさへネガティブな発言をするような高齢者にはつくづくなりたくないものだが、こうならないためのヒントがここに集約されているように思った。

 また、このコーラスをひっぱっていく指揮兼コーチのボブの態度がとてもいい。高齢者相手に、まったく手加減せず(日本だったら、ひたすらやさしくしすぎて気色悪いくらいなものだが)、びしびしと難曲を彼らにチャレンジさせていくのだ。

 妙に老人扱い=コワレモノ扱いすることがいいとは限らない!、と示すいい手本になっているように思えて鳴らない。実際にこの映画を薦めてくれたMT嬢曰く、「ゼロの親に対する態度が鬼畜だと思ってたけれど、あれってもしかして高齢者をシャキっとさせる効果があるのかな?、ってこの映画をみて考えさせられた・・・」とのこと。

 老人だからとか、ボケてきたからというだけで、やさしくして、何も否定しないで受け止めていくというのが本当にいいのか?、という問題提示を私たちに投げかけてくるだけでなく、死ぬ間際までチャレンジする目標がある人間がどれほど幸せでいられるか?、というものを示唆してくれるすばらしい映画だと思った。

 同じく人の《死》にまつわる映画『おくりびと』を観たかった私。結局念願かなって、フランスに戻る機内で鑑賞することができた。これはこれでいい作品だと思ったものの、個人的には『Young@Heart』から得た感動からは程遠いと思ったゼロでした。




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