ゼロの視点
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2009年02月20日(金) タブーはうんざり

 西表島のとある集落のとある旅館でのこと。宿泊に際しては、この地にて長年フィールドワークをしている研究者T氏に手配してもらったので、宿泊当日に宿に行くまで、直接宿の人とやりとりすることはなかった。

 到着したら、手配してくれたT氏の名前を伝えたあとで、宿泊の手続きをすればいいのかな?、などと漠然と考えながら、港からのバスにゆられていた私たち。ようやく目的地の停留所に到着し、そこからは荷物をガラガラとひいて宿まで徒歩。

 なんとも昭和テイストの風情ある宿の玄関に入り、「すみませ~ん」と声をかけてみる。しばらくすると、奥のほうからリラックスした格好の宿の主とみられる人が、私たちのほうへ向かって歩いてきたので、挨拶をしながら次のように言ってみた。

 「Tさんのほうから紹介で、本日から2泊お世話になることになってるものなんですが・・」と伝えると、宿の主人と見られる人は「ちょっと待っててください」という言葉とともに、また奥へ消えていった。

 予約表でも確認に戻ったのかな?、などと思いつつ、玄関で待ってみた。

女性の声「だれぇ?」

 と、奥からの会話が明瞭に聞こえてきた。どうやら、主人の妻と思われる人が、奥に陣取っているようで、「だれぇ?」という、夫に対するものの尋ね方と声の出し方からして、主人が完全に妻の尻に敷かれている妻
感じがひしひしと伝わってきて、おかしくなってきて私はニヤニヤ笑いが止まらなくなってきた。

そして、「だれぇ?」という妻の問いに、主人は次のように答えた。

主人「ガイジンっ」

妻「じゃ、○○号室」

 が・い・じ・ん?!?!?!?!、と、ここまであっけらかんと会話されたうえに、ガイジンと答えるだけですぐに部屋番号がわかるという、この宿のチェックインシステムに、ビックリ。そして、主人が奥から玄関に戻ってきて私たちに、「それじゃ、お部屋に案内します」といって、一緒に彼についてくるように指示してきた。

 部屋に案内されたあとは、「食事は6時からです」という言葉だけを、主人は私たちにかけただけで、彼はまた奥方がいると思われる部屋へ消えていった。私たちが誰で、どこからきたのかなどということはどうでもいいらしい。宿帳に記入なんつーことも求められず。夫のパスポートを見せろとか、そんなのももちろんなし。

 T氏の知り合いということでOKだったんだろうが、それでも、ガイジンというひとくくりでやり取りが片付いてしまうシュールなコミュニケーションがツボにはまってしまい、しばし笑いが止まらなかった私。

 今や差別用語のひとつとして、マスコミをはじめ自主規制されて久しい言葉、それがガイジン!。こういった自主規制に常日頃うんざりしていた私は、妙にこれが面白くて新鮮で、嬉しくなってしまったのだ。ううーん、このユルさ、たまらないっす♪。

 怖いものなしの認知症老人連中と、かろうじて成立するか否かギリギリのラインで会話していると、突然、ものすごい放送禁止用語とか、差別用語が彼女らの口から出てきて、これまたものすごく面白く、ツボに入りまくった私は終始笑いっぱなしになるのだが、それと似た面白さが、宿の主人との会話で体感でき、ひどく満足だったゼロでした。




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