ゼロの視点
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昨年の春、私と一緒に日本にやってきたMJの紹介とのことで、とある女性から電話がきた。既婚のELという女性で、夫がずうっと日本語をやっているのだが、誕生日プレゼントに日本語個人レッスンのプレゼントを考えているのだが、その先生をお願いできるか?、という問い合わせだった。
いきなり値段とか、どんなレッスンを提示できるかと質問攻めにされたので、適当にかわしつつ、こっちも彼女に質問攻めしにしていく。
■彼女だけが乗り気でレッスンをプレゼントしたいと思ってるのか?。
■日本語の文法じゃなく、日本語で話し相手になってあげてほしいとのことだが、それは彼自身が欲していることなのか否か?。
■親切な妻な印象もうけるが、逆になんでも仕切っている妻の押し売りのようなプレゼントなのでは?。
などなど、色々な疑問がアタマに浮かんできたが、ま、とにかく初回のアポをとって、とりあえず電話を切った。私なら、勝手に夫が個人教授とかを発見して、プレゼントだよ〜、なんてやってきたら、絶対に嫌なタイプなので、大丈夫なのかこの話?、と思うことしきり。
とにかく、秘密のプレゼントということゆえ、私が彼女の夫に直接電話して、どのようにして学びたいのか等、なにひとつ尋ねることはできない。ああ、面倒くさい役回りだなぁ・・、と思いつつ、初回の本日を迎えた。
日本語初心者ではないことだけは、妻側から聞き出していたので、参考書、辞書、日本語学習教材、簡単な日本語の読み物、日系フリーペーパー等をカバンにつっこみ、待ち合わせ場所へ行くと、妻からのプレゼントを受け取ってしまった夫TMがいた。
挨拶をフランス語でかわしたあと、さっそく彼の日本語レベルをチェックも兼ねて日本語だけで話しかけていく。TMは考えながらも、日本語できちんと応答してくる。まったくの初心者に教えるよりも、こういうレベルのほうがいたって楽なので、正直この時点でラッキーと思った私。
そして、カフェに入って腰をおちつけ、簡単な世間話を日本語でしたあと、彼がいきなりカバンから一冊のテキストを出してきた。日本語の読解テキストで中級レベルと書いてある。そして、彼がテキストを開き、第1章に掲載されている原稿用紙に2,3枚レベルの、ルビすらふってない普通の日本語の文章を、スラスラと読み始めたから、ビックリ。
驚きながらも、小学校の時の国語の時間などを思い出してしまった。スラスラ、漢字なども含めて、抑揚をきちんとつけて読むことができる子もいれば、ひっかかってばかりの子などもいたなぁ・・、と。さすがに、非日本人訛りはあるものの、なかなか調子よく日本語を読んでいく彼に、圧倒されっぱなし。
和仏辞典で、わからない言葉は全部調べ上げ、新しく増えたボキャブラリーで、また色々と例文を作って頭にインプットする作業をここずうっと続けているとのこと。すごいぞっ!。
“て、に、を、は”や、主語などがない、日本語独特の言い回しなどの理解には、未だに苦しんでいるようだが、話す、読む、書くという作業をここまで総合的にやって、まだ4年ということを考えれば、近いうちにかなりのレベルにいくのではないか?、と思われる。
日本にいれば違うのかもしれないが、フランスを中心に“日本語を学んでいるフランス人”らには、それなりに出会ったりするのだが、幸か不幸か、私は、このTMレベルまでの人に知り合ったことはなかった。
日仏カップルないしは、インターナショナルカップルで、非日本人♂のほうが日本語が流暢だったりする。とはいえやはり、私たち生粋の日本人が話す速度や語彙にはなかなか対応できないことが多い。
ゆえに彼らのレベルにあわせて、日本語を話すことになるのだが、こっちの日本語までもが、彼らにつられて変になりそうになることも多々アリ、これはこれでなかなか面白くも危険なコミュニケーションにだったりもする。
または、話すほうはペラペラなのだが、日本語の読み書きはまったく駄目というタイプにも、かなりの頻度で遭遇してきたように思う。
我が夫にいたっては、一方的に知っている日本語を口にすることは得意だが、日本語で話しかけられたらアウトというレベルでしかなく、おしゃべりで暑苦しいオウム状態。
《ゼロがフランス語話すから、日本語が覚えられない!》等と、わけのわからん理由を盾に、日本語ができない悲劇を皆にボヤくのが趣味になってきている夫だが、このTMの存在が起爆剤となって、オッサン、真面目に日本語習得に燃え始めてくれるといいのだが、さてさて、どうなることやら。
ちなみに、TMとの日本語会話レッスンは、初回お試しで、生徒であるTMがピンとくれば以後続けていくというシステムにしておいたのだが、さきほどTMのほうから続けたいと申し出があったので、しばらくこのまま週1ペースで様子をみていくことになった。
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