ゼロの視点
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2009年03月11日(水) 暗証番号の落とし穴

 母が認知症になってからというもの、“老い”に関する考え方が必然的に変化していったように思う。おまけに自分も確実に年を重ねているわけであり、まださきのことでありながら、もしかしたら、あとちょっとのことなのかも?、等と、あえて戦々恐々としてみたりすることすらある。

 あらゆるところで暗証番号を求められるのが、現代社会。キャッシュカードはもちろんのこと、申し込みをするだけで暗証番号やパスワードが必要だったり、うまく管理してないと自分が、そのパスワードからはじき出されてしまう危険がいっぱい。

 私のパリの自宅アパルトマンは、道路に面した入り口で暗証番号を求められ、次にエレベーターにのっても、暗証番号を押さないと中でブロックされてしまう仕組みになっている。もちろん、上に行く場合と、下に降りる場合でも別の暗証番号が要求される徹底ぶり。

 防犯にはとてもいいのだろうが、もし、ボケはじめちゃったらどうすりゃいいんだろう?!?!?!、と、ふと不安になったりするのだ。階段もあるのだが、そこにアクセスするには暗証番号は必要ないにしても、やはり鍵が必要とされるゆえ、物忘れがひどくなってくる初期のボケレベルくらいから、このアパルトマンで暮らし続けることは、けっこう大変なことになってきそうだ・・・・・(汗)。

 留守電メッセージ聞くにも暗証番号が必要だし、メールボックスにアクセスするにもパスワード。幸いなことに、コンロに火をつけたり、冷蔵庫をあけたり、シャワーを浴びるのにパスワードがないことだろうか・・・・。

 母の場合は、より便利に・・・・と思ってやった風呂場のリフォームがアダとなってしまった。ボタン操作だけで湯加減から、水位など調節できる便利なオートタイプにしたのだが、ボケはじめた彼女にはそれがなかなか覚えられず・・・・。

 それでも、私の暮らしと比較すれば、遥かに暗証番号やパスワードを使う頻度が限られた生活をしていた母。どうにもこうにも一人暮らしに黄色信号が点滅しだした頃でも、母は鍵をなくして家に入れないで困った・・・、という経験は、なんとかせずに済んでいた。

 何者かに憑依されたように、朝から晩まで探し物をしている認知症患者に、新米の医者が「何を探しているんですか?」と尋ねたら、「そんなことがわかるのだったら、問題はないっ!」と、患者に怒鳴られたという逸話を聞いたことがある。

 というように、何を探しているのかわからないので、それをひたすら探し続けるような状態になってしまった場合、エレベーターにふと乗ったのはいいものの、その瞬間、自分が上にいきたいのか、それとも下に行きたいのか以前に、何がしたいのかもわからなくなってしまった挙句、エレベーターの扉が非情にも閉まり、そのまま中でブロックされてしまうかもしれない将来・・・・・・・・・・・・・・・・。


これは、ちょっと、マジで、こわぁーーいっ、と思ったゼロでした。




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