KENの日記
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2002年08月15日(木) 8月15日

終戦記念日を前にして、NHK海外放送で印象的な番組を見ることができました。それは、台湾沖海戦における日本海軍の軍事成果が非常に過大に報告され、次のレイテ島において、この報告により米軍軍事力を過小評価したことから壊滅的な失敗繋がり、そうした「粉飾報告」は終戦まで続いたというもの。番組では、海軍部内における戦果報告作成の過程を追って、現場・現地司令部・大本営といた各段階での報告検討過程が報道されていました。


私は、日本でもこちらでも経理を担当しているので、番組をみて改めて難しい問題だなあと感慨を新たにしました。というのも、ひとつには、最近「エンロン・ワールドコム」といった大企業が粉飾決算により危機に立たされているとおり、行き過ぎた(?)株価至上主義によって企業経営者は(意識的にも無意識にも)粉飾の誘惑に駆られているとう現実があるからです。国民の安全・発展が国家の目的であるはずなのに、海軍・陸軍のメンツが優先してしまった当時の状況は、今の企業社会にも見え隠れします。


もうひとつの興味は、限られた情報をどう判断すべきかという問題です。情報が豊富で判断がほぼ確実に保証されれば問題がないのですが、ことはそう簡単ではなく、非常に少ない情報で、さらにそれに基づく将来によって意思決定しなければならない場合があるからです。NHKの放送の中で、当時の関係者の証言として「現地司令部も大本営も現地から報告を否定することができない状況であった」と報道していました。しかしその背後で、現地には大本営の作戦を遂行して失敗は許されないと心理が大勢を占めていて、上部組織の意に沿う報告が意識的に作られていたのでした。情報の評価・将来の予測に、どれくらい「意思」を参入することができるかという問題でもあります。


企業にとって「失敗を恐れずに挑戦すべし」「ポシチブ思考」といった前向きな行動様式は最も大切な精神だと確信していますが、時に誤解が生じて、情報を悲観的に分析することが消極論と取られたりすることがあります。果敢に挑戦することと、失敗の危険性を十分評価し、リスクをヘッジすることは矛盾しないはずなのですが、こうした思考はまだ十分定着していないようです。


でも、NHKの番組の中で高級参謀が「当時のことは忘れてしまった。」と証言していることろや、「現場司令官が報告に偽りがあれば腹を切るというので否定できなかった」という現地司令部の雰囲気を見るにつけ、組織人間の行動の難しさも実感したひとときでした。




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