今日は天気が今一歩の日曜日なので、日本から持ってきたビデオテープで音楽をじっくり聴きました。曲目はベートーベンのピアノ協奏曲3番・4番・5番です。演奏は3番・5番がポルリーニ・ベーム・ウィーンフィル(1977年の録画)、4番はバックハウス・ベーム・ウィーンフィル(1967年の録画)といものです。
1977年というと私の大学時代であります。確か1977年か78年のはずですが、ポルリーニの二回目の来日の演奏会を上野文化会館に聞きに行きました。演奏曲目はシューマンの「交響的練習曲」と「シューベルトの変ロ長調D960ソナタ」でした。どっちを先に演奏したのか思い出せません。でもそれ以来この二曲は私の気にかかる曲になりました。ポルリーニを凌ぐ演奏を捜す楽しみができたのです。演奏会でのピアノの音はラジオを通して想像していた通りの音(特に和音)でした。
ベームの指揮は晩年の印象等から、亡くなってから敬遠がちだったのですが、この三曲の協奏曲はとても溌剌としているし、適度に引き締まっていて非常に好感がもてました。もっとも本当のところは、ウィーンフィルと独奏者が上手に音楽を作り上げているだけまもしれません。ベームの曖昧な指揮の下でポルリーニとウィーンフィルが全く隙のない完璧な合奏を展開しているのです。ポルリーニは髪の毛が豊富で若いです。私はモーツァルトの肖像画に似ていると思っていました。また、三番ではコンマス、そして五番では故ヘッツェル氏の横で弾いているウィーンフィルのキュッヒル氏も髪の毛が豊富で若々しいです。
ポルリーニをバックハウスを比べるのは無謀ですが、ポルリーニのテクニックはすごいです。どんなパッセージでも手・指の形が一定で余裕があり、10本の指がそれぞれ別な生き物のように動きます。その特徴は特に和音の音がとても透き通って聞こえることに繋がります。でもバックハウスの音のやさしさはポルリーニを凌ぎます。和音や早いパッセージが濁って聞こえるのは、ポルリーニの後から聴くと止む得ないでしょう。しかし慈愛に満ちた音はやはりすごいです。4番だからなおさらそのように弾いているのか知れません。
この11月にポルリーニが来日していて日本で演奏会を開いているとのこと。しかし、25年前のベートーベンの演奏でポルリーニは既に十分成熟しています。これ以上なにを望む必要があるのかと思います。私も25年程まえの演奏会以降、何度もポルリーニを聞いていますが(CDとかテレビです)、最初があまりにも強烈だったためか、それ以降「こんなはずではない」という印象の方が強いのです。勝手に言わせてもらうと、ポルリーニは当時すでに完成していたのではないかと思われるのです。当時、完璧なテクニックと純粋な音楽への情熱はすでに奇跡を生んでいたのだと思います。
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