さくら猫&光にゃん氏の『にゃん氏物語』
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2002年11月19日(火) にゃん氏物語 帚木12

光にゃん氏訳 源氏物語 帚木12

五 六日して 紀伊守が その子を連れてきた 整った顔ではないが
艶な風采で貴族らしかった そばに呼んで源氏は打ち解けて話をした 
子供心に 美しい源氏の恩恵を喜んでいた 姉の事も詳しく源氏は聞く
答えられる事は答えて かしこまっているので 源氏は秘密を言いづらかった
けれども上手にぼかして話すと そんなことがあったの?
とおぼろげに解かり 解かれば解かるほど不思議だが 深い詮索はしない

源氏の手紙を弟が持って来た 彼女は(困り)あきれて涙さえもこぼれてきた
弟がどう思うだろうかと苦しかったが 手紙は読むつもりで きまり悪さを
隠すように 顔を隠すように広げた 手紙は長かった 最後に

『見し夢を逢ふ夜ありやと歎く間に目さへあはでぞ頃も経にける』
(夢見た夜以来 逢う夜があるか歎き 目さえ合わせず眠れない夜を過ごす)
夢見た夜から眠れない夜を過ごしてるので 夢を見ることができないとあった
目もくらむ 美しい字で書かれていたが 涙で目も曇り何も読めなくなって
苦しい思いの運命が さらにつけ加えられた身の上の運命を 思い続けた

翌日 子君(貴族の年少者の愛称)が呼ばれた 子君は姉に返事を催促した
『あのような手紙を もらい見るような人がいませんと 申し上げなさい』
「間違う訳がない ちゃんと言われたので そんな返事はできない」
と言うので 秘密は弟に打ち明けられたのだと思うと 源氏が恨めしい
『そんな大人みたいに言う…断れないならお邸に行かなければいい』
無理を言われて弟は「呼ばれたので 行かないと」と言って そのまま行った

『昨日も一日中お前を待っていたのに…私が愛してもお前は冷たいね』
源氏が恨みを言って子君は顔を赤くする 『返事はどこだ?』
子君はありのまま告げる『おまえは姉さんには弱いね 返事ももらえないで』
また源氏から新しく手紙が渡される
『おまえは知らないけれど私は伊予の老人より先に恋人だったのだ 頼りない
貧弱な男といって 姉さんはあの不恰好な老人を夫に持ち 今も私を知らない
などと言って軽蔑している だけど おまえは私の子でいていればいい 
姉さんが頼りにしている人は 老い先 短いよ』と源氏がでたらめを言うと
子君は そうだったのかと思い その様子を源氏はかわいく思った
源氏は言葉通り子君に親代わりらしい世話をした 姉は終始源氏から貰ったが
返事はしなかった 弟が落し見つかれば不運な恋に泣く 不釣合いな恋である
ほのかに見た源氏は美しく思い出されるが 気持ちを伝えてもしようがない

源氏は彼女が忘れられない 気の毒にも恋しくにも思った 彼女が自分の事で
苦しんでいる様子が目に浮かぶ 本能のまま逢いに行くことも
人目の多い家で困る 自分のためにも彼女のためにもと思い苦しんでいた


さくら猫にゃん 今日のはどう?

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