さくら猫&光にゃん氏の『にゃん氏物語』
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2002年11月24日(日) |
にゃん氏物語 空蝉04(うつせみ完) |
光にゃん氏訳 源氏物語 空蝉04
源氏は二条の院に帰った 源氏は逃げられてしまった今夜の話をして やはり駄目だと言い 恋人が恨めしいようだ 子君は気の毒で何も言えない 『姉さんは私をよほど嫌っている そんな自分が嫌になった そうだろう せめて話ぐらいしてくれてもいいのに 私は伊予介より つまらない男だ』 恨めしくてそう言う そして持って来た薄衣を寝床に入れて寝た 子君を側に寝させて 恨めしい事も 可愛く思う事も言っていた 『お前は可愛いけれど 恨めしい人の弟だから いつまでも可愛がって あげられるかどうか』源氏が真面目に言うので 子君はしおれていた
しばらく横になっていたが源氏は寝られない 起きるとすぐに硯を取り寄せ 手紙らしい手紙ではなく 試し書きのようにして書く
『空蝉の身をかへてける木のもとになほ人柄のなつかしきかな』 (蝉の抜け殻を残して行くように衣を脱ぎ捨てて逃げ去っていった 貴方ですが なおも人柄が懐かしく思われる) これを子君は懐にしまった 継娘にも何か言っておきたかったが いろいろ考えた末に手紙を書いて子君に託すのはやめた あの薄衣は小袿(こうちぎ)だった 懐かしい気がする匂いが深く 染み込んでいるのを源氏は側から離そうとしなかった
子君が姉の所へ行く 空蝉は待っていたように厳しく小言を言う 「本当に驚いた 私は隠れたけれど 誰がどのように想像するか知れない こんな幼い浅はかな事ばかりするあなたを軽蔑されると心配する」 源氏と姉の間でつらい立場で小言が多いことを思いながら 歌を出した こんなことを言いながらも手紙は読んだ 抜け殻として源氏に取られた 小袿が汚い着古しでなかったかなと愛を感じながら 複雑な想いで… 西の対の君も今朝は恥ずかしい気持ちで帰っていった 誰一人気付かず ただ一人で物思いにふける 子君が行き来するのを見て胸をおどらすが 手紙は貰えなかった 男の冷たさからとは まだ解からないが陽気な性格 なのに 何となく悲しげである 冷静を装いながら空蝉も源氏の深い思いが感じられるにつれ 結婚する前 であったらなあと かえらぬ運命が悲しいばかりで 源氏の手紙の端に
『うつせみの羽に置く露の木隠れて忍び忍びに濡るる袖かな』 (羽に置いた露が木の間に隠れて見えないようにして 人目を忍んで 涙にぬれる私の袖です) と書いていた
さくら猫にゃん
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