さくら猫&光にゃん氏の『にゃん氏物語』
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2002年11月25日(月) |
にゃん氏物語 夕顔01(ゆうがお) |
光にゃん氏訳 源氏物語 夕顔01
源氏が六条の女の所に通っていた頃 御所から行く途中にある 病気で尼に なった大弐の乳母を尋ね五条辺りの家へ来た 鍵を開ける乳母の息子の 惟光が来るまで質素なその辺りを眺めると 隣の家に外囲いは新しい檜垣で 前面は上げ格子を四 五間ずっと上げ渡した高窓で新しい白いすだれを掛け そこから若い綺麗な感じの額つきを並べて 女数人が外を見ているのを見た 高い窓から顔が見えるその人たちは非常に背が高いと思われる
どんな身分の者だろう 風変わりな家だと源氏は思った 今日は車も地味で目立たなく 人払いの声も立てさせてないから 源氏は自分が誰か解からないだろうと気楽に思い 家を深く覘こうとした 門の戸も上げ下げできる蔀(しとみ)風で上げられていて 家の全部が見える 簡単なものでした 哀れに思うが 仮の世の中だから 宮も藁屋も同じだ というような内容の歌を思い出して我々の住まいも同じことだと思った
端隠しのように青々とした蔓草がのびのびと這っていて それの白い花だけ その辺りの何よりも嬉しそうな顔で笑っていた その白い花は何の花か歌を 口ずさぶと源氏につけられた近衛の随身がひざまずき「あの白く咲くのは 夕顔です 人の名のようで人並みに こんな卑しい家の垣根に咲くのです 言葉通り貧しげな小さい家が立ち並ぶ通りのあちらこちらの家で あるいは 倒れそうになった家の軒にも この花が咲いていた
『気の毒な運命の花 一本折ってきて』と源氏が言うと蔀風の門内に入り 随身は花を折る 少し洒落た作りの横戸口に黄色の生絹の袴を長めにはいた 愛らしい童女が来て 随身を招き白い扇を色付くほど薫き燻らした物を渡す 「これへ載せてあげなさい 手で提げては不恰好な花ですから」 随身は夕顔の花を 丁度鍵をあけにきた惟光の手から源氏に渡してもらった
「鍵の置き場所がわからなくて大変失礼しました 誰か解るような分別を 持たない人たちが住んでいる所ですが 見苦しい通りにお待たせしました」 惟光は恐縮していた 車を引き入らせ源氏の乳母の家へ下りる 惟光の兄の 阿闍梨(あじゃり)乳母の婿の三河守 娘など皆最近来て このように 源氏自身で見舞いに来てくれたのを非常にありがたがる 尼も起き上がって
「もう死んでいい身ですが 未練があるのは貴方様にお目にかかる事です 尼になり功徳で病気が楽になり 貴方様にもお目にかかれたのですから もう 阿弥陀様のお迎えも快く待っていられます」と言い弱々しく泣いた 『長く回復しない病気を心配している内に 尼になってしまって残念です 長生きして私の出世を見てください そのあとで死ねば 九品蓮台の最上位に 座れるでしょう(極楽浄土に生まれ変わり九階級の最上位の蓮の台に座る) この世に少しでも未練を残すのはよくないから』源氏は涙ぐんで言った
さくら猫にゃん
今日のはどう?
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