さくら猫&光にゃん氏の『にゃん氏物語』
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2002年11月30日(土) にゃん氏物語 夕顔06

光にゃん氏訳 源氏物語 夕顔06

「まだ誰かわかりません 隠れているのが解らないように苦労しています
時々見かける姿はとても美人らしいです  先日 先払いの車が通った時
女童が『右近さん早く 中将さんが通ります』と言うと かなりの女房が
出て『静かに 何故解るの 見てみる』と言って来る 車の人は直衣姿で
随身達もいて あれは誰これは誰と上がる名前は頭中将の者達でした」

『確かな事が その車の主について知りたいものだ』
もしや頭中将が探すことのできない常夏(撫子)の歌の女であろうかと
思めぐらす源氏の顔色を見て惟光は「我々と同じ階級の恋と見せかけ
その中に女主人がいると知ってますが女房相手の恋人として通ってます 
訪ねると女童などがうっかり言い間違えそうになり ごまかして
自分達だけだと取り繕います」と笑って言った
『尼君の お見舞いに行った時に隣を見せてくれ』と源氏は言った
たとえ 仮住まいでも あの五条の家だから下流階級の女だろうが 
その中に面白い女が発見できればと思うのであった

惟光は源氏の機嫌を取ろうと一所懸命であるし 彼自身も物好きなので
苦心の末に源氏を隣の女の所へ通わす段取りをつけた
女が誰か解らないまま 源氏は名も明かさず 思いっきり質素に 車にも
乗らないことが多かった 深く想っていなければできない事だと 惟光は
思い 自分の馬に源氏を乗せ 自分は徒歩でお供した
「女がこの姿を見たら驚くなあ」とこぼすが お供も夕顔の花折りの随身
それと源氏の召使で顔をあまり知られていない子侍だけにした それから
知られては困るから隣の家にも寄らない 女の方でも不思議で 手紙の
使いに人をつけたり 夜明けの帰りに道をつけさせたが まかれてしまう
そうしても源氏は十分に惹かれ 一時的な関係に終わらせたくなかった
不名誉だと自尊心に悩みながら五条通いをする

真面目な人も恋愛では過ちを犯す 源氏は女の事で世間の非難を浴びる
ことはなかったのに 夕顔の花では別だった 別れ行く間も昼間も
逢いたくて悩む 自分自身で気が違っている それほど価値があるかと
反省もする 驚くほど落ちついて上品でおっとりした性格で深い考えは
持たない 若々しい一方で男女の仲を知らない訳でもない 貴婦人では
ない どこが惹きつけるのか不思議だった わざわざ普段の源氏に用が
ない狩衣を着て変装した源氏は顔も全然見せない ずっと夜更けに人が
寝静まった後に行ったり 夜のうちに帰ったりするから 女の方では昔の
三輪の神話の変化の者のようで気味が悪かったが どんな男か手触りで
解るので 若い今風の男とだけ思う やはり好色な隣の五位が手引き
したと惟光を疑うが 何食わぬ顔で相変わらず色恋に夢中なので
どういうことかと 女の方でも普通の恋とは違う物思いで苦しんでいた


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