さくら猫&光にゃん氏の『にゃん氏物語』
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2002年12月03日(火) にゃん氏物語 夕顔09

光にゃん氏訳 源氏物語 夕顔09

門内に車を入れ 西の対に支度してる間 高欄に車を掛けて庭にいた
右近は艶な趣を味わいつつ 女主人の過去の恋愛場面など思い出す
管理人の客への扱いが非常に丁寧なので 右近はこの今風な男の
正体が解かった ほのかに物が見える頃に家に入る 急支度だが
見栄え良く座敷が設けてある「それ相応のお供がいないのは不便だ」
などと言う管理人は下家司(六位以下の下級家司)だから座敷の
傍に来て「御家司を誰か呼んだ方がいいのでは」と言うが
『わざわざ誰も解からない様に 此処を選んだのだから誰にも言うな』
と源氏は口止めをする お粥などが運ばれてきた 給士も食器も
間に合わせでやるしかない こんな経験が無い源氏は全部別の事に
考えて 気にしないで 皆と遠慮せず話し合う楽しみに酔おうとした

源氏は昼頃起きて格子を自分で上げた 景色はひどく荒れて人影はなく
はるばる遠くまで見渡せる 向かい側の木立は気味悪く 皆古い大木に
なっている 近くの植え込みの草や灌木に美しい姿は無い 秋の荒野の
景色であり 池も水草で埋って凄いものである 別棟に部屋を設けて
管理人が住むが そこからは かなり離れている
『気味悪い家になっている でも鬼も私にだけには何もしないだろう』
と源氏は言う まだこの時も顔を隠していたが この態度を女が
恨めしそうに思っているようなので 何と言う錯誤だ 悪いのは自分だ
こんなに愛しているのに と気付いた

『夕露にひもとく花は玉鉾のたよりに見えし縁こそありけれ』
(こうして花開くように覆面を取って顔をお見せするのも
 道の通りすがりにお目にかかった縁によるものです)
『当てずっぽうに貴方が思ったと言った時の人の顔を近くで見て
幻滅しないですか』と言う源氏の君を 流し目で女は見上げて

『光ありと見し夕顔のうは露は黄昏時のそら目なりけり』
(光輝いていると以前 私が見た夕顔の上露のようなお顔は
 ほの暗い夕暮れ時の見間違いでありました)と言った
冗談まで言う気になったのが源氏は嬉しかった 打ち解けた瞬間から
源氏の美は輝き始める 古くさい荒れた家との対比は魅惑的である
『いつまでも本当の事を言ってくれないのが恨めしくて 私も誰なのか
隠し通したが負けました もう名のり下さい 世間離れし過ぎてます』
と源氏が言っても 「家も何もない女ですもの」と言って まだ
打ち解けない様子も美しい 源氏は『仕方が無い 私が悪い』と
嘆いてみたり 永遠の愛を誓い合ったりして時を過ごした


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