さくら猫&光にゃん氏の『にゃん氏物語』
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2003年01月05日(日) にゃん氏物語 若紫19

光にゃん氏訳 源氏物語 若紫19

『とても可哀相な女王様とより親しみを覚えた以上 私は一時的にも
こんな所に置いてゆくのは気掛かりで堪らない 毎日想いを送ってる
私の家に移させよう こんな寂しい暮らしは女王様によくない』
「宮様もそう言っています あちらへは四十九日が過ぎてからと」
『お父上の邸であるけど 小さい頃から別々に住んでいたから
私への気持ちや親しさはそんなに変わらないでしょう 今から一緒に
暮らす事が将来の妨げにはならない より愛情が深くなるでしょう』
と女王の髪を撫でながら言い 源氏は後ろ髪を引かれる想いで去った

深く霧が立ち曇る空も艶で地面は霜で白い 実際の恋のお忍びに
似合う朝の風景で それを思うと源氏は物足りなさを感じた
最近密かに通っている人の家が途中にあると思い出して 門を叩きに
やらせたが 中には聞えていないようだ 仕方が無いのでお共の中で
声のよさそうなのを選んで歌わせた

朝ぼらけ霧立つ空の迷ひにも行き過ぎがたき妹が門かな
朝方霧立つはっきりしない空模様でも素通りできない貴方の家の前
ですね と二度繰り返させた よく知ってる下仕えの女中を出して

立ちとまり霧のまがきの過ぎうくば草の戸ざしに障りしもせじ
立ち止まって霧の立ち込める垣根あたりを通りすぎにくいなら
門を閉ざすほどに生い茂った草など何でもないでしょうと言いかけ
女はすぐに門に入ってしまった それっきり誰も出て来なかった
帰るのは冷たい気がしたが だんだん夜が明けて
なんとなく恥ずかしいので 二条の院へ帰った

可愛らしかった小王女を思い出し 源氏は独り微笑みながら寝た
朝遅くになって源氏は起きた 手紙を書こうとしたが 書く文章も
普通の恋人あてとは違うので 筆を休め休め考えて書いた
美しい絵なども贈った

ちょうど今日は按察使大納言家へ兵部卿の宮が来ていた 前よりも
もっと邸が荒れ果て 広くて古い家に小人数で住んでいる寂しさは
宮の お心を動かす
『こんな所に少しの間でも幼い子供がいられはしない やはり
私の邸に連れて行こう そんなに問題は無い所だ 乳母は部屋を
貰って住めばいい 姫君は何人も若い子達がいるので一緒に遊んで 
とても仲良くやっていけるだろう』と言った そばへ呼んだ小王女
その着物には源氏の衣服の匂いが深く染みていた
『いい匂いだね でも着物は古くなっている』心苦しい様子だった


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