さくら猫&光にゃん氏の『にゃん氏物語』
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2003年01月13日(月) にゃん氏物語 末摘花02

光にゃん氏訳 源氏物語 末摘花02

大輔の命婦は面倒になるなと思いながら 御所も暇な時だったので春の
日長に退出した 父の大輔は宮邸に住んでないで そこには継母がいる
その家に出入りするのを嫌って命婦は祖父の宮家へ帰っているのです

源氏は言っていた通り十六夜のおぼろ月夜に命婦の所へ来た
「困りました こんな天気は音楽には適していないですから」
『いいから御殿に行って わずか一音一声でもいいから弾いてもらおう
聞かないで帰るのは つまらないと思うから』と源氏は強く望む

命婦はこの貴公子を散らかった自分の部屋へ置いて行くのはよくないと
思いながら寝殿に行くと まだ格子を下ろさないで梅の香のする庭を
女王は眺めている ちょうどいい機会だと命婦は思った

「琴の音を聞かせて欲しいと思うような夜ですから部屋を出てきました
私は帰って来ても いつもあわただしく伺いまして聞く時間がないのが
残念です」と言うと
「貴方のような分かる人の前で…御所に出る人に聞かせる芸では』
こう言いながら すぐ琴を取り寄せたので 命婦は源氏が聞いていると 
思うとはらはらした 女王は微かに爪音を立て 源氏は興味深く聞いた
そんなに上手ではないが 琴の音は他の楽器にない風変わりな音だから
聞きにくくはなかった

この邸は荒れ果てている そんな寂しい所に 女王の身分で大切に
育てられた名残もない生活をするのは どんなにつまらないだろう
昔の小説ではこういう背景にはよく美しい女性が現れたなと源氏は思う
今から言い寄りに行こうかとも思ったが 露骨だと思われるだろうから
恥ずかしくて 気がひけて 行きかねていた

命婦は気が利く人なので 名手と言い難い女王の音楽を長い時間源氏に
聞かせるのは 女王が損すると思った
「曇りがちで月が見えにくい夜ですね 今夜私にお客様が来る約束です
私がいないと 嫌って避けていると受け取られては困りますので また
ゆっくりと聞かせてもらいます お格子を下ろして行きます」
命婦は 女王に琴を長くひかせないで部屋へ戻った

『あれだけでは聞きがいがない どの程度の腕か分からず残念だ』
源氏は女王に感心を持っていた
『できたら近い座敷の方へ案内してもらって 他の場所からでも女王の
衣擦れの音を聞かせてもらえないかな』と言った
「それは駄目ですよ 気の毒な暮らしをして滅入っている人に男の方を
紹介する事はできません』と命婦が言うが 源氏も正しいと思った


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