![]() |
ロープで引かれる子舟 - 2002年05月31日(金) 彼が漕ぐボートに ロープで繋がっている私が乗る子舟は 彼が漕ぐ手の勢いを増せば 私も引かれて速度を速める。 ロープ一本で繋がっていて しかも私はオールも持たず漕ぎもせず ただ水の流れに流されているかのように 引かれるままに、流されるままに。 彼は進み行く方向ばかりを眺めている。 けして私の方を見ることもなく。 彼は言う。 「子舟の中で、好きなことをしておいでね。 そのために僕は一生懸命にオールを漕いでいるのだから。 いつかお前のオールを見つけて 一緒の船で漕げたらいいね」と。 私は子舟に本を積み込んで のんびりと読書を続ける。 本の重みが増して、彼の漕ぐ手も大変そう。 でも いつも心の中では 自分のオールを早く見つけたいって 思っている。 そう思いながらも私は どんどんと本を積み込み続ける。 ロープが重みに耐えかねて、 もしかして、いつか切れてしまうかもしれない。 そういう不安を毎日毎日かかえながらも 私はやっぱり子舟の中に本を積み込み続けている。 「専業主婦は不良債権だ」って、誰かが言った言葉だけれど 私なんぞは 本当にどうにもならないほどの高額な 不良債権だなあと 自分でも感じる。 だから 私は自分が嫌いだし 彼には 感謝している。 いつか、本当に自分のオールを見つけたいって 思っているんだよ。 ごめんね。 ...
|
![]() |
![]() |