流れる水の中に...雨音

 

 

翼 - 2002年06月15日(土)

私は昔から 翼が欲しかった。
翼を持って 自由に飛び回りたいと思っていた。
翼を使って 遠いところに飛んで行きたいと望んでいた。
でも どうやったら翼を持つことができるのかわからなくて
それに 誰も翼について 私に教えてくれる人もいなかった。


私には 翼がなかったけれども
そのかわりに 小さい鶏冠をもってた。
鶏冠をもっていたとしても それは
なんの役にも立たないけれど
でも 私には鶏冠があった。

だから私は空を飛ぶことができないけれども
頭の上の鶏冠のお陰でほんの少しだけ自己主張することができた。


私は毎日神様に「翼をください」とお願いしていた。
くるひもくるひも。
代わりに私の鶏冠を奪われることになろうと
そんなことどうでもよかった。

ある日 見るに見かねた神様は私に
頭の鶏冠と引き換えに銀色の小さな飛行機に乗せてくれた。



飛行機は宙に浮かび上がると勢いを強め
次第に高く高く飛び上がった。
遠くに見えた森も一瞬のうちに飛び越して
あんなに遠くに見えてた星が手に届きそうだった。

私は思わず手をのばしたけれど
あと 少しのところで どうしても手が届かない。
私は立ち上がり 背伸びをしながら 必死で星を掴もうとした。
だけれども 
私の乗っている飛行機は 急に向きを変えると
星とは反対の方向に飛び始めた。
どんどん 遠ざかる星を眺めながら
私はかつて頭に光っていた 小さな鮮やかな鶏冠のことを思い出し
涙がぽろぽろと 零れ落ちた。

飛行機は 私の望まない方向へ向かいながら
雲の厚く厚く重なる場所へ迷いこんだ。


どこへ辿り着くのかもわからないこの飛行機の上で
私は やっぱり 失った鶏冠のことを
嘆き続けていた。








...




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