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夜の海にて。 - 2002年09月11日(水) 海岸線に建つホテルに泊まりに来た。 テラスからは湾の弧を描く砂浜が 左右にどこまでも長く続いていた。 夜。 テラスにでて 海を眺めていた。 すぐそこに ほんの100メートルほど目の前に存在するはずの海は 地球本来の 明かりのない暗黒に包まれていて 姿など何処にもみえず ただ 波の轟きだけが ザバン ザバン と やけに大きな音で この耳に 響き続けていた。 私は多分 今までに こんなに恐ろしい海の姿を見たことがなかった。 波が砂浜に寄せる音が幾重にも 本当に幾重にも重なり 長い海岸線を端から端まで連呼して 空気を轟かす。 それはまるで地響きのようでもあり また 遠くから近づいてくる雷のようでもあり 姿を現さぬ獣の姿に 訳もわからず身がすくんだ。 こんな波に呑み込まれたら 抗う術もなく ひとたまりもないだろう。 この音はまるで この私を狂気へと追いやるかのように 離れもせず また近づきもせず 一定の距離を保ちながら 私に 脅威を与え続けていた。 以前にも これに似たような恐怖を感じたことがあった。 阪神大震災の地響きの音。 どこか 本当に遠い何処かから 次第にこちらへと近づいてくる大きな力。 ごおお・・ごおおおおお・・ごおおおおおお・・・と。 これから起こることの予感を半分感じながら そして 何が起こるのか予想もつかない恐怖を半分抱きながら 地響きが こちらへと近づいてくる緊迫したなかで 私は部屋の床に四つん這いになりながら 迫り来る脅威をこの身に受けとめようとしていた。 覚悟?いや それは覚悟ではなく 抗えない大きな自然の力を 受けとめねばならないという 諦めだったのか。 朝になると 穏やかな海岸線が広がっていた。 海はその姿を現し 遠くに開ける海は何処までも続いて 凪いでいた。 岩を砕くほどの 厳しい波の音はなく 其処にあるのは 白い泡をたてながら 浜の白砂のうえを 優しく撫でゆく 波であるだけだった。 ...
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