流れる水の中に...雨音

 

 

ハイヒール - 2002年11月05日(火)


ハイヒールには 何だか不思議な力がある。

仕事をしていた頃は 仕事柄 女性らしい服装を望まれていたものだから
どんなときでもヒールを履くようにしていた。
はじめてヒールを履いたのは 高校3年生のとき。
少し背伸びをして ヒールを履いて遊びに出かけた。
次第に足が痛くなり 歩けなくなって 足を引きずりながらも
踵の高さになれるために 必死で履いてた。
質の良いヒールの選び方を知らなかったころだから
よく靴選びには失敗した。
何足も何足も失敗して ようやく今のブランドに辿り着いた。

昔 とてもエレガントな大人の男性に
「女性は背が高くてもハイヒールを履かねば駄目だよ」と
口髭をなぞりながら 囁かれたのを覚えている。
そう まだ幼かった私に向かって。
彼の言葉が私の頭の中にずっと焼き付いていた。

私はハイヒールを履くと 人込みから 頭ひとつ分だけ高くなる。
それでもやっぱり ハイヒールを履くのは
ヒールを履いたときの背筋の伸びが好きだから。
なにだか張りつめた緊張感が私を「女性」にしてくれるから。

ヒールを履くと 背筋がピンと張る。
頭ひとつ分高いものだから 誰とも視線を交わらせずに済む。
私の視点は曖昧な宙をみつめて
誰一人として視野にいれやしない。


ある東京の画商に
客の質を靴底の減り方で判断する と聞かされた。
今どきナンセンスな と思ったけれど
或る部分では 靴の持つ意味は重要かもしれない。


歳の離れた姉のハイヒールを履いた後ろ姿を思いだす。
背の高い姉は 細い足にハイヒールを履いて 
やわらかいウエーブのかかった長い髪を揺らしながら歩いていた。
幼いころから私は 
そんな姉の後ろ姿を追っかけて来たのかもしれない。

彼女と今 ハイヒール談義を繰り広げると
彼女は味気なく
「今なら絶対あんなもの履いて通勤しないわ」と
やっぱり今でも細い足を投げ出しながら
そう 答えていた。











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