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桐 - 2003年04月27日(日) 家の傍らに 大きな桐の樹が植わっていて それは私がここに引っ越してきた時にはすでに 大きな樹になっていたわけだけれど 今頃の時期になれば 毎年 きれいな薄紫の花を 咲かせている。 昔は 女の子がうまれると 庭に桐の樹を植えたものらしい。 女の子が成長するころには 桐の樹は 立派な幹を持つ大木へ成長しているらしく それでお嫁入りのための箪笥なんかを こしらえてもらったものらしい。 桐の大木をみると その話をいつも思い出す。 それは母が話してくれたのだった。 母を車にのせて病院にむかうとき 神戸の芦屋の住宅街は細い山道になっていて その道のわきに 美しい薄紫の桐の花が咲いているのを見て 話してくれた。 父は 神戸の街が美しく見おろせる芦屋にある病院に 入院していた。 桐の葉はとても大きく青々としていて そしてたった一枚の葉で大きな影をつくる。 まだ葉の成長の甘い枝の先端部分では 花芽と幼葉との大きさの絶妙なバランスをみせる。 いわゆる家紋などで使われる桐の絵柄は その花芽と幼葉の先端の部分をデザイン化したものだ。 桐は伸びはじめた葉よりも植栽2年後に一度根元から切った方が 良く成長する性質があるため「一度切る」から「キリ」と 名付けられたということらしい。 私のお嫁入りの箪笥は もちろん 庭に植えてくれた桐の樹で こしらえたものではないけれど 自分の成長とともに 一緒に育ってきた桐の樹と 生涯をともにするのもなかなか粋だなと思ったり。 今では居住環境の問題で 庭に桐の樹を植えられる人は なかなかないだろうけれど ゆっくりと育まれたものたちと 一緒に生きていくことの 贅沢さ 人間らしさを あらためて立ち返り求めたい気持ち。 人の成長も桐と同じようなスピードでなされて まるで一人前の大人のような顔をしているけれど 自然界にあるものは たかが20年じゃ まったくの幼さで 全然そのものの本領など 発揮できていないよ。 桐の樹の成長が早いために なにだか桐といえば まだ青い人間をさすみたいにね。 私達なんて まだまだ。 まだまだ 一人前だなんて言えなくて 伸びきった空洞の幹の内部の密度を これから何十年もかけて どっしりとさせて行かねば ならないのだね。 ...
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