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typhoon - 2003年05月31日(土) 深夜 午前三時 台風はもう そこまで近付いていた 荒れた風は樹木を 獣のたてがみのように揺らし 轟々と 止むことなく 唸らせていた 雨はまだ 小降りで 風に運ばれて 開いた窓からも 部屋の中へと 刺し込んできた 雨を孕んだ冷たい風に 髪を靡かせながら この 激しい風に 吹き攫われてしまえればいいのにと 心のどこかで 願っていた 空を渡る雲は 勢いを強めて 風の向く方向へと 急ぎ足で 流れていた 仕材置き場の保護幕は 風を捕まえて 大きく大きく うねっていた 風の渦に巻き込まれた 街も 木も コンクリートの建物も 電線も 夜も 私さえも 荒々しい この腹立ちまぎれの低気圧の化物に 喰われてしまえばいいと 空を睨みながら 願っていた 化物が残すのは 風に散らされた まだ青い木の葉と たぶん 眩しい程の好天気と 空虚なままの 私で あるのだろう ...
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