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交差点の天体ショー - 2003年07月02日(水) ある昼下がり。 ひとりの青年が交差点でじっと立ち止まってた。 それはとても大きな交差点で 道路の向こう側まで およそ20メートルは あるんじゃないかなと思う。 彼は何かを見ているようである。 信号機が赤から青に変わっても 彼はそこに立ち尽くしてた。 暫くすると 私は 彼が対角にあたる 向こう側の角にどしっと構えた白い大きなビルの壁を 凝視していることに気がついた。 太陽の傾きと 周囲の建物の関係で 日光は その交差点の 他の三つの角を蔭にして 白い大きなビルの壁だけに 眩しい程に 光を突き刺してた。 その大きなビルの白い壁は 不自然なほど平面で また 不自然なほど広かった。 そしてその 窓ひとつない白壁は まるでエーゲ海の島にある建物のように のっぺりと そして一身に受けた陽の光を 拡散するように撥ね返していた。 私はその 交差点に 背を向けるようにしてたっていた。 突然 周囲がざわめいた。 私の隣にいる人は 交差点の方を向き 嗚呼.....と 声を漏らした。 私は急いで 彼の視線の方向を見定めるべく 振りかえる。 交差点の角に立ち尽くす青年の頭が目に入る。 そしてその向こうにあるのは 白い壁。 そこに映っていたのは 何千 何万という細かい反射の煌めき。 カッティンググラスに水を入れて光に翳すと 屈折した光が拡散され そしてあるものは ガラスも水も通り抜け テーブルクロスに 小さな銀河系をつくりだす。 まさに そんな光景だった。 私の隣にいる人が 天体ショーだ と呟いた。 太陽と地球との間に浮遊する小さな小さな宇宙の塵が 投影された幻灯だった。 太陽を見上げると まるで水中の気泡のような 小さな泡粒が空いっぱいに漂っていた。 次第に光は強くなり 私は思わず目を閉じた。 赤橙黄緑青藍菫の七つの色が瞼から入り込んだかと思うと 私はそのまま 強い光の中に包まれてしまった。 閉じた瞼のすきまから 眩しいばかりの光が 意識に突き刺さっていた。 ...
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