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『ららのいた夏』 川上健一 (集英社文庫) - 2005年04月23日(土)

ららのいた夏
ららのいた夏
川上 健一
『翼はいつまでも』で青春小説の名手という地位を不動のものとした川上健一氏であるが、今回過去の作品を手にとって見た。

かつてこの小説ほど希望に溢れた青春小説ってあっただろうか?
川上健一の青春小説を読む時、読者は童心に帰らなければならない。

本作は純愛小説的な部分とスポーツ小説的な部分が見事に融合されている。

なんといっても主人公の坂本ららが爽やかだ。
彼女は陸上部にも入ってないが走るのが大好き!
次々とマラソンの記録を塗り替えていくのである。
笑顔を絶やさず走っている姿が読者の脳裡に焼きつくのである。

彼女に恋する純也との出会いも印象的だ。
高校生のマラソン大会の最中で運命の出会い。
校内マラソン→ロードレース→駅伝→フルマラソン→国際マラソンと駆け足で登っていく過程を満喫してほしいな。

ららと純也のお互いがお互いを支えあってる部分って本当に読者に伝わってくるのである。

青春時代が現在進行形の読者はもちろんのこと、はるか昔の時代となった読者も過去の記憶が鮮明に甦ってくるのである。

少し展開的には出来すぎ(少女漫画的)な感は否めないかもしれないが、本作のような会話主体で読みやすい文章は、大人となって様々なしがらみの中で生きている私たちにとって重要なエネルギー補給的な要素があると思える。

なぜなら“人生って夢を持って生きていくべきである”からだ。

しかしながら、現実は“青春時代”も坂本ららの走りっぷりと同様、短くてあっという間に駆け抜けてしまうのである。



このレビューを読んでくださった10代20代の方、もし未読であれば是非手にとって欲しいなと思う。

中高年の方もご自分で手にとってみてよければお子さんに読ませてあげて欲しいなと切実に思う。

ラストは号泣される方がいるかもしれないが、読後感は爽やか!
まさに川上氏の独壇場である。
読み終わった後、タイトル名の意味あいをもう1度考えた時は胸がいっぱいになりましたが・・・

明日からは少しでも“爽やかにかつ潔く”生きたいなと思う。

評価9点 オススメ

2005年34冊目


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