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『黒笑小説』 東野圭吾 (集英社) - 2005年06月04日(土) 東野 圭吾 / 集英社(2005/04) Amazonランキング:7,072位 Amazonおすすめ度: ![]() ![]() ![]() ![]() 集英社からは『快笑小説』(1995年)、『毒笑小説』(1996年)に続くお笑い系の第3弾となる作品集である。 過去に『名探偵の掟』(1996年)が上梓された時には度肝を抜かされた私であるが、さすがに東野ファン歴も長くなった(笑)。 そんなに驚くべき内容じゃなかったが、日頃シリアスな長編ばかり読んでいる読者にはかなり驚愕の1冊だといえるかもしれない。 人生にも読書にも作家にも“息抜き”が必要なのだろうか? 本作を読むに際しての私が掲げたテーマである。 短編集としてのコンセプト的には“二兎を追いすぎた”内容とも言えそうだ。 全13編中、作家や文学賞や編集委員に関わる話、いわゆる文壇物(登場人物がリンクしております)が全4編含まれている。 表紙カバーにも東野氏が登場、編集委員と共に選考結果を待つ姿を風刺的に映し出している。 文壇物の内容的には“予想通り”の内容である。 いや、予想以上と言ったほうがいいのであろうか。 たとえば最後の「選考会」なんかはあたかも“こう言うこともあるから私(東野氏)も本作のようなブラック短編集も書いている”という心の叫びを聞いたような気がする。 それにしてもつくづく思うのは“作家”というのは大変な商売であるということである。 “ここまで書かなくてもいいのに”という意見と“ここまで書けるのはさすが実力作家東野さん!”と言う意見が真っ二つに分かれそうですが、読者は本作の帯どおり“ブラックジョーク”だと思って軽く読み進めることが肝要なのであろうか・・・ 東野氏の作品を追いかけ続けて来たファンはもちろん東野氏の○○賞ノミネートにまつわるエピソードは熟知している。 東野氏が悔しい思いをして来たことは想像にかたくない。 私的には文壇の方は『超・殺人事件』の続編として出版すべきだったような気がするのであるが、でも出版社が違うからどうしようもなかったのか・・・ その他の9編はそれぞれ肩肘張らずに楽しめる内容となっている。 東野氏のキラリと光るユーモアセンスが心地よい。 一番楽しめた作品はやはり東野氏の代表作と言われている『白夜行』をもじった「シンデレラ白夜行」である。 この短篇を読んで雪穂を思い出した方はかなりの東野通と言えるのかも知れない。 「シンデレラ白夜行」のシンデレラ同様、東野圭吾はしたたかで非凡な作家である。 今や、そこいらの○○賞作家よりも人気・実力共に上を行く作家だと思われている読者も多いはずだ。 東野ファン歴が長くて東野氏の今までの軌跡を知っている人ほど、やるせなさが残る短編集でもあることは否定できない。 東野氏の才能は本作に登場する寒川先生より高いことは言わずとしれたことなのであるから・・・ 評価7点 2005年46冊目 この作品は私が主催している第3回新刊グランプリ!にエントリーしております。 本作を読まれた方、是非お気軽にご投票いただけたら嬉しく思います。(投票期間2005年8月31日迄) ...
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