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『フォー・ディア・ライフ』 柴田よしき (講談社文庫) - 2006年01月11日(水)


柴田 よしき / 講談社(2001/10)
Amazonランキング:67,533位
Amazonおすすめ度:
心にしみる
眠れなくなること請け合いの本



 <新宿で無認可保育園を営む探偵“ハナちゃん”こと花咲慎一郎が大活躍するハナちゃんシリーズの第1弾>

さすが稀代のストーリーテラー、柴田さんだけあって登場人物それぞれが個性的だけでなく生き方もドラマティック。
他のシリーズで大活躍のあの山内さんまでも登場、柴田さんのサービス精神ぶりにうっとりされた方も多いことでしょう。

読みやすさと言う点においては柴田さんのシリーズ物の中では一番かも。
誰からも好かれるハナちゃんのキャラが大成功。
彼の悪戦苦闘振りの忙しさ(ハードな生き様)には読者もページを捲る手が止まらなく、思わず嬉しい悲鳴をあげた方も多いことであろう。

今から8年前の作品なんで、通信関係(パソコン)の表現にどうしても古臭さも漂っているのであるが、いつの時代になっても共通な家族問題のあり方やジェンダー問題・不法就労問題や福祉問題など、慌しい展開の物語の中にも鋭いメスを入れている点は見逃せない。
やはり子どもを育てることの大変さを痛感された方も多いことであろう。

あと、女医・奈美先生と恋人(と言えるのであろう)理沙とのコントラストも読ませる。
男性読者はこんなところ敏感です(笑)
どうやら理沙に心を奪われつつあるようですが・・・
2人とも素敵な女性なんで(笑)、どうしても比較しちゃうものね。
次作以降の展開がどうしても気になります。

少し読み違えかもしれませんが、この作品には大勢(前述の2人・元タレント・保母たち・漫画家など)のそれぞれの過去を持った女性が登場します。
たとえば女性読者が読めば、自分に近い性格(生き様と言った方が良いのかな)の人物に投影することも出来るはず。
彼女達がハナちゃんと接し、結果として彼の危機一髪な状態から守り抜きます。
そう言った観点から読者一体型のミステリーかもしれませんね。
もちろん、ハナちゃんの根っから優しい性格がより読者を身近なものとしているのでしょうが・・・

ラストの「にこにこ園」の園児ミッキー(10歳の少年)が起こす事件がなんとも印象的である。
子どもはとっても敏感であると痛感した。
お子様がいらっしゃる主婦が読まれたら心が痛んだはずである。

どんな苦しいことがあろうとも、支えてくれる人がいるハナちゃん。
彼が眠る時間を惜しんでまで“必死に”生き、周りの人々に“勇気”を与えてくれているからだ。

本のタイトルともなっている“フォー・ディア・ライフ”(「一所懸命」)、柴田さんからの大いなるメッセージだと思います。

評価8点

2006年冊目


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