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『ロズウェルなんか知らない』 篠田節子 (講談社) - 2006年02月08日(水)


篠田 節子 / 講談社(2005/07/06)
Amazonランキング:6,776位
Amazonおすすめ度:
過疎の町は救えるのか
5回も読んでしまった
人々の虚心を描いた


<地方の方が読まれたら“間違いなく元気が出る本だな!”と信じて本閉じた。>

かつてスキー客で賑わった地方の駒木野という町(モデルは福島県飯野町)が舞台。
現在は新幹線や高速道路の整備でスキー場がなくなり温泉もないことから観光客が途絶え過疎化が進んでいる。
何回か町(行政)が村おこしを試みたが現在では放置状態。

この作品はやはり地方の方が読まれるのと都会の方が読まれるのでは捉え方が違ってくるだろう。
たとえば同じような環境のところに住まれてる方はかなりの確率で登場人物に共感できるだろうし、都会に住まれてる方は多かれ少なかれ他人事と言うか馬鹿げたことだと感じられるかもしれません。

財政赤字を合併で埋め合わせようとしているケースが多い近年、日本の地方の過疎化問題は本当に深刻である。
重松清の『いとしのヒナゴン』に相通じる部分があるので合わせて読まれたら面白いかも・・・

本作はもちろんフィクションですが前述したようにモデルとされている町もあり、日本の実態を露呈していることには目を背けてはならないのである。
内容的には“日本の四次元空間”と名うって立ち上がる靖夫を中心とした地元の青年クラブの面々の奮闘記と言えよう。
ひとり冒頭で都会からなだれ込んで来たコピーライター鏑木の存在が大きい。
はじめはいい加減なキャラとして描かれているが、途中からは青年クラブのメンバー達よりも芯の強さを発揮。
それにひきかえ、意外とだらしなくずっと独身であった弱さを露呈するメンバー達が滑稽であり人間らしいとも言える。

本作で青年クラブの面々が行ったオカルト現象利用行動はやはり法に触れていけない面もあるのであろうが、なぜか憎めず少なからず肯定したくなるのである。
一因として過疎をもっとも象徴しているのは青年クラブ=青年でないクラブという実態があげられる。
ほとんど40才手前の人間が主流であるからだ。
なおかつ全員独身である。
篠田さん、なんとかしてやってよ(笑)
彼らを決して全面的ではないが弁護はしたいと思う。

観光業ってやはり目玉がなければリピーターどころか初めての訪問客も来ないですよね。
だから作中のオカルト作戦も真剣に考えた上での行動。
彼らにとっては生きるか死ぬかの問題であったからだ。
少しドタバタ的な流れにもなって捉え方によっては焦点がしぼれてないという面もあるかもしれない。
このあたり作者が故意にそうしてるのであろうが、多少読み手によっては受け入れにくいかもしれない。
はじめのイメージと変わっていく登場人物の変化に驚かれた方も多いかも。

篠田ワールドの真骨頂は青年クラブと別サイドの人に対する描写の的確さである。
“背に腹は変えられず”奮闘する青年クラブの面々とは対照的に町役場の石井課長に象徴される行政の対応、残されたツルサダを中心とした保守的な考えの町の人たち、あるいは面白おかしく報道するマスコミ連中。
彼らに対して鋭いメスを入れている点は本作を読む上でのキーポイントである。
とりわけ市役所に勤務されてた作者の行政に対するやるせない気持ちは訴えるものが大きかったような気がするのである。

あとは前述した鏑木に負けず劣らずのキャラの人物が楽しませてくれる。
ひとりはバラクリシュナ徳永というタレント、あとはかつてのアイドルレポーター役の風見さゆり。
男性読者としてちょっと彼女に興味が湧いた点があります。
彼女の生き方なんかどうなんだろう?
彼女ってしあわせなんだろうか?
少なくとも平凡じゃないですよね。

もっとも印象に残ったというかリアルに感じたのは整体師である誠の変化。
腕のいい整体治療がオカルト治療に変化していく。
悲壮感が漂っていて現実にありそうな話ですね。

篠田さんって直木賞は受賞されたがどちらかといえば実力に人気が追いついていない作家のひとりだと思う。
彼女の作品が概して社会派的要素が強いこともその要因であろうか。

本作もグローバルに見れば、日本の将来にかかわる大きな問題を提示している。
コメディタッチに近い内容&展開でこういった深刻な問題を平然と書ける作者の力量に舌を巻いたのは私だけであろうか?
その答えをあなたから聞きたいなと思ったりする。

評価9点 オススメ

この作品は私が主催している第4回新刊グランプリ!にエントリーしております。
本作を読まれた方、是非お気軽にご投票いただけたら嬉しく思います。
(投票期間2006年3月15日迄)





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