『女たちは二度遊ぶ』 吉田修一 (角川書店) - 2006年05月18日(木) <この作品集について居酒屋で女の子と語り合えたら楽しいだろう。それが12番目の物語となるであろうから・・・> 本当になんにもしない女だった。炊事、洗濯、掃除はおろか、こちらが注意しないと、三日も風呂に入らないほどだった。 「野生時代」に掲載された11本の短編を単行本化したもの。 吉田さんの特徴である都会に住む男女の機微を巧みに描いたショートストーリー。 “都会の今”を切り取って描かせたらこの人の右に出るものはいないだろう。 あまりにもリアルであって、ついそこの居酒屋やアパートで同じ光景が現在進行形で行われているような気がする。 どの短編にも個性的な女とちょっとだらしない男が登場する。 だらしない男は各編に共通していてまるで作者の分身のようでもある。 ジャンル的には一応恋愛小説ということになるであろうか。 ただし、他のどの作家の描く恋愛小説とも一線を画する。 通常、恋愛小説って言えば女性読者がターゲットとなって書かれている部分が多い 純愛系、幻想系、辛辣系、露骨系さまざまなジャンルがある。 本作は上記のどれにも当てはまらず常識を覆している。 男女どちらが読んでも同じぐらい楽しめる作品である。 私は敢えて“現実系”というジャンルを設定したいなと思う。 お洒落な短編集だが、どの男達もまるで古いアルバムから取り出すように過去を語っているように見受けられる。 まるで後ろめたさと懐かしさを噛み締めるようにして・・・ 各編とも女性と距離を近づけることによって知ったこと。 それが語り手となっている男性側の想い出となっている。 作者は恋愛を達観しているのだろうか? 私はそういう疑念にとらわれながら読み進めていった。 このさめた視点はデザート感覚で読書出来た場合、すこぶる心地よいであろう。 もう少し美化してもいいような気もするが、そこが吉田さんの持ち味なんだな。 男性作家が描くと女性のしたたかさも可愛く思えるから不思議なものである。 吉田さんの男性主人公ってご多分に漏れずナイーブな人が多い。 本作においてもしかり。 個人的には中学の時の想い出を語る「最初の妻」がいちばんひねりも効いていてかつ切なく心に残ったかな。 でも本来はそういう読み方をすべき作品集ではないと思ったりする。 1編1編を味わうのじゃなくて、11編を読み終えて何かを感じ取る作品集だと思ったりする。 それでなければ物足りなく感じても仕方ないかもしれない。 最後まで読み終えて全体を思い返してみた。 やはり魅惑的な女性たちに賛辞を贈っているような気がしてならない。 11人の美しい女たちに。 まるで“女に男が必要な以上に男には女が必要である”と語っているかのようだ。 結局、吉田さんは何を言いたかったのか? 少し考えてみたいと思う。 まずタイトルの『女たちは二度遊ぶ』、お洒落で意味深なネーミング。 これはやはり11人の登場人物(女性です)に敬意を払った言葉であると解釈したい。 ひとつの結論として男性読者が読めば“女性の可愛さを再認識出来る”し、女性読者が読めば“男性の前で今まで以上に可愛く演じることが出来る”作品である。 少し余談であるが、11回なんでちょうど連ドラにどうかなと思うのは私だけであろうか? 毎回、旬の女優入れ替わりでやれば高視聴率間違いなし。 主演はイケメン男優“よっしゅう”さんに決定かな(笑) 現実になったりして・・・ 評価8点 この作品は私が主催している第5回新刊グランプリ!にエントリーしております。 本作を読まれた方、是非お気軽にご投票いただけたら嬉しく思います。(投票期間2006年8月31日迄) ...
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