今朝のテレビで、 「室蘭では“やきとり”に豚肉を使う」 という話題を取り上げていました。 大昔この町では、養豚が奨励され、 その皮を使って軍用の靴などをつくっていましたが、 そうすると肉が余ります。 それを安く買い、なじみのある“やきとり”の名で 売り出したアイデアマンがいた…というような伝統が、 今に引き継がれているとのことです。
それで、自分自身の 「絵に描いたような食べ物のドシ話」を思い出しました。
13年前、就職のために静岡で暮らすことになりました。 電圧60ヘルツのところで暮らすのは初めてでしたが、 気候もよく、まあまあ暮らしやすい町だと思い始めていたころ、 ペーペーの私は、「昼食の注文」という仕事を仰せつかりました。 職場の地下食堂を含め毎日3〜4の店に電話をしていましたが、 自分自身は弁当持ちか、 地下食堂の一番安い定食を頼んでいました。
弁当を持たずに出勤したある日、 地下食堂のメニューで、 「はんぺんフライ」というのを見つけました。 そのとき、私の頭に思い浮かんだのは、 白いふかふかの座布団のようなはんぺんを半分にして、 できたらチーズか何か挟んであって、 衣をつけて揚げてある、そういうものでした。 う〜ん、おいしそう。 きょうはサイドにこれをつけよう!と決め、 注文しましたともさ。
さて、お昼になりました。 ○長のラーメンも、△次長のカツ丼も、 NさんやKさんや私の定食も、み〜んな届いたのに、 問題のはんぺんフライだけが届きません。 何やら、灰色の小判型の練り物に 衣のついた揚げ物が1つあるだけです。 そこで私は、地下食堂に電話をしました。 「はんぺんフライが来ていないのですが…」 「済みません。今お持ちします」 でも、電話をした直後、Yさんが衝撃の一言を発しました。 「なんだ、来てるじゃん」 「え」 「これ。はんぺんフライでしょう?」 と、指さしたのは、その「灰色の(以下省略)」でした。 「これ、はんぺんなんですか?」 「……そうだよ……?」
静岡に来るまでの20年間、 はんぺんというのは、白くて座布団のようなもの、 と思い込んでいたので、すぐにはわからなかったのです。 (それしか知らないんだから、当然ですが) 帰りのバスの中から、海産物を扱うお店を注意深く見たら、 確かに「名物 黒はんぺん」などの張り紙もありました。 いわしの身を使っているのであの色なんだそうで、 いわゆるつみれを小判型にしたものという感じでしょうか。
そんなこんなで、 静岡にいた頃は、なぜだかほとんど口にしなかったのですが、 もともと嫌いじゃないタイプの食べ物なので、 簡単に手に入らなくなった今になって、 時々食べたくならないでもありません。
でも、静岡のスーパーにだって、 白いはんぺんくらい売ってたけどね…
そういえば、奥田瑛二さん(愛知県出身)が、 奥様(東京出身の安藤和津さん)とまだ結婚したばかりの頃、 全く同じことでモメたという話を聞きました。 御夫妻の場合は“おでん”だったそうですが、 「はんぺん入れていって言ったのに!」(黒) 「だから、こんなにたくさん入れたでしょう!」(白) 何だか、目に浮かぶようです。
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