土曜日生まれは腰痛持ち

2007年02月28日(水) 円楽さんの「薮入り」

高校や中学校のテスト最終日、
さあー、終わったぞー、遊ぶぞーという局面で、
テンションの下がる演劇や落語を
鑑賞「させられた」記憶はありませんか?

ふだんは舞台ものを見るのが嫌いじゃないけど、
学校から押しつけられるのはいかにも興ざめで、
「あ〜あ…」という気持ちで見たら、
これが意外におもしろくて……ということはまずなく、
見た後もやっぱり「あ〜あ…」になることがほとんどでした。
中学時代に同じ状況下で落語を見せられた我が娘は、
「先生方は、中学生には難しいからウケがいまいちだと思ってるけど、
ぶっちゃけおもしろくなかっただけなんだよね…」と
身もふたもないことを言っていました。
芸術鑑賞の名目で落語を見せるという姿勢も、何か嫌


そんな中学生時代、学校の行事ではなく、
しかも夏休みに、母の趣味で、
落語を見につれていかれたことがありました。
三遊亭円楽さんの独演会でした。

演目は1本ではなかったはずですが、
「おもしろかった」ということ以外、ほとんど覚えていません。
ああ、「町の若衆」とかあったかな。
茶室を建てるというので、旦那の甲斐性を褒められたら、
「町の若い衆が寄ってたかってつくってくれた」と
謙遜する奥様の話。
オチは中学生にはちょっと刺激の強いものでした。

何かよくわからないけど、
この馬面のおじさんは、
落語がとっても上手なんだなぁと思っていたら、
あっという間に最後の演目「薮入り」になりました。
これは、ある程度の技術がある人が演じれば、
それなりに感動するお話なのでしょうが、
映画やドラマを見て泣いたことのなかった(当時)私が
奉公に出ている子供が里帰りしたら、
あれを食わそう、これはどうだとそわそわする親と、
ちょっと成長して帰ってくる子供、
その両方の心境になって、深く考えずに泣きました。
実に気持ちのよい落涙でした。
……演ずる円楽さんも泣いていました。
「この人これを演ると、いつも泣くねぇ」と、
うちの親が、余り好意的とは思えない口調で言っていました。
その夜、私たちを車で送ってくれた
若い女性たち(母の知り合いの知り合いの知り合いぐらいの人)
「あの人って、ちょっと保守的だよね」
「あ〜、私もそう思ったぁ」と、
あんまり好感を持っていないような口吻でした。

ざっと26年前の夏のことです。
13歳の娘っこの頭には、
「円楽さんはなぜか嫌われ者」という情報と、
「でも、「薮入り」はすっごく泣けた」という記憶が
しっかりと残りました。


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