土曜日生まれは腰痛持ち

2007年04月14日(土) カート・ボネガット・ジュニアの死

カート・ボネガットが亡くなった。そういうものだ。
Kurt Vonnegut died. So it goes


この人の作品は、
「スローターハウス5」しか読んだことがありません。
また厳密に言うと、忘れかけていたものを、
最近また読み直す「機会」があったのです。
それも、小学生の娘を寝かしつけるに当たり、
しち面倒くさい大人の話を読み聞かせれば、
きっと寝つくだろうという
ちょっと邪な気持ちによる本のチョイスで、
たまたま手元にあったものを読んだに過ぎません。
プイグ「蜘蛛女のキス」、芥川龍之介「南京の基督」
フィリップ グランベール 「ある秘密」
大人にとっては魅力的なお話ばかりですが、
6歳児には効果てきめんな子守唄となります。
宵っ張りのお子さんに手を焼く保護者さんに、強力にお勧めします。
パタリロみたいに、難しい経済学の本の朗読でケタケタ笑うような子は、
それはそれで、育て方次第では国の宝となるでしょう。


ボネガットは、「スローター…」の中で
「死」にまつわることを書いた後、
必ず「そういうものだ So it goes」とシメていました。
小説の性質上、「死」の登場が、
大杉漣の映画出演のごとく頻繁だったので、
しつこいほどに繰り返されていた印象があります。

世界じゅうの彼のシンパは、その訃報に接したとき、
きっと「So it goes」と自分に言い聞かせたのでしょう。
この機会にほかのも読んでみようかなーと思った
中途半端なファン予備軍の私としても、
「御冥福をお祈りする」かわりに、
「そういうものだ」と口にのぼせてみました。
原語の表現も日本語訳も、明快でいい言葉だなと思います。

ところで、某翻訳エンジンで
「そういうものだ」を英訳したら、
It is as such. と出ました。
So it goesを日本語訳したら、
「したがって、それは行きます。」ですと。

完璧主義で有名だった今は亡きアメリカの映画監督は、
外国で自作が公開されるとき、
現地語に訳されたものを、必ず再英訳させてチェックしていたといいます。
現地語にしろ、英語にしろ、
翻訳する人は、翻訳エンジンのように杓子定規ではないでしょうから、
上記ほど極端なことは起きないでしょうが、
なんか、なぁ。ねぇ。わかるよね。そのさ……ねぇっ。
できる限り、自分の言わんとするところを
的確に伝えたいという思いはわからんでもないけれど、
言葉が違うというだけで、
それ自体が結構な温度差でしょう。
本当に完璧主義だったというならば、
現地語を勉強した上で、
その訳をあたかも母国語を読むように読み下して判断するのが
筋という気がしないでもありません。


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