2004年11月01日(月) |
「ああ、手がうごく」 |
この度、新しい貨幣の肖像に、女流文学者の樋口一葉と医学博士の野口英世が 採用され、本日より巷に出回ったそうである。 生憎、今日は外で千円札しか遣わなかったので、小銭の釣りしかもらえなかったが…。 新渡戸稲造と夏目漱石はいよいよ引退か。弐千円札ってちゃんと流通してるんだろうか。 漱石が千円札の顔として登場した時、地元(特に松山辺り)はイベントめいた騒ぎで 盛り上がっていたが、あれってそんなに昔のことだったっけ。 壱万円札は福沢諭吉より、以前の聖徳太子の方が、アタシは良かったのになぁ。 しかし世界のDr.ノグチが千円札で、夭折の女流作家が五千円札とはこれ如何に。
野口英世については、主にその少年時代を、小学1年の時の担任の先生がかいつまんで 話してくれ、初めてその名を知った。早速親に伝記を買ってもらい、読んだ。 それは確か3年生から5年生向けの内容で、文体も古めかしく苦労したように思うが 分からない語はその都度、親に訊ねたり自分勝手に解釈したりしながら どうにかこうにか読了したものだ。
例えばイントロは 『カン、カン、カン、小使いさんの打つ火打石の音が…』 で始まり エピローグは 『おお、そして野口博士の残した… こそが、みなさんのしがいのある つとめではないでしょうか』 と結ばれていた。 “しがい”とは何のことやら分からず、父に訊いて「やり甲斐のある、果し甲斐のある」 という意味であろう、と述懐してもらうといった具合。
英世(幼名清作)は、赤子の頃に囲炉裏に落ちて火傷し、左手が拳状に固まったため 不自由な手を「てんぼう」と同級生にからかわれたが、学業成績は群を抜いて優秀であった。 本来であれば家業の農業を継がねばならない身であったが、母親が息子に学問で 身を立てさせようと働きづめに働き、勉学に専念させる。 良き恩師にも恵まれた清作はのちに渡米し、アフリカの地で黄熱病に倒れるまで 細菌研究の権威として成功をおさめ、世界的名声を得るほどの人物となった。
ウィルスの概念のなかった時代で、野口博士の学説は後世に悉く覆されたということだが アタシには、高校生になって初めて読んだ一葉より、幼少期に馴染んだ野口英世、 母シカの献身から立身していった野口清作の方が、より身近に感じる人物なのである。
どうでもいいけど野口博士の肖像は、漫画家の加藤芳郎にちょっと似てるな。
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