みちる草紙

2004年11月18日(木) うさぎ病院初体験記

紋次郎の異変に気付いたのは、床に就こうとしていた午前3時頃だったろうか。
前肢を何度も何度も床にスイスイ滑らせ、うまく立ち上がれないのである。
その上妙におとなしい。新しい干草を入れてやってもおやつを見せても、無視を決め込む。
いやしん坊で暴れん坊のもんがひっそりしていると、何だか気持ちが悪い。
?おかしいぞ?
大体この時間帯、こいつのエンジンは全開バリバリの筈だがな。
抱き上げても普段のようにむずからず、なすがまま。こんな奴じゃないのに、益々へんだ!

 一体どしたの?もん。

 開けても出てこようとしないし。

 いつものように走らないし。 
  
 そんな顔して寝そべってばかり。    

それから朝まで一睡もせず、もんをはらはらと見守り続けた。
胸に抱いてこたつで温めたり、ベッドに寝かせてみたり、頭を撫でてやったり。
もんは、目を細めて鼬のように身体を伸ばし、鼻を小刻みに震わせ続けていた。
さっきまであんなに元気にしていたのに、急に一体どうしたのよ。
うさぎは、具合が悪くてもギリギリまで仕草に表さず、そのため手遅れになることが多い。
“もんが死んだ”
そんな報告を知人に送ることをふと想像した瞬間、鳩尾に錘を落としたような寒い痛み。

 見るからにしんどそう…。

だめだ、病院に行こう。    

いやだ!あと3日で、うちにやって来て1周年じゃないか。絶対に死なせはしないぞ!
朝になるのを待ちかねて、国内に1軒しかないという、うさぎ専門病院に電話をする。
『特に予約制ではないので、診療時間内に連れて来て下さい』
ああ良かった!もん、田端に着くまで持ちこたえるのよ!
空が鉛色に曇って外は寒い。もんをネル布でくるみ、キャリーバッグに入れる。
会社を休んでいる今で良かった。どのみち、欠勤してでも連れて行くだろうけど。

バス、西武池袋線、山手線と乗り継いで、1時間ほどして田端駅に到着した。
橋にかかる長い階段をゼイゼイ息切らせて上り、メモした道順に沿って歩いて行くと
前方左手に目当てのラビットクリニックが見える。
中に入ると、待合室にはうさぎの小物や置物が、そこかしこふんだんに並べられ
壁のボードにも、病気を治してもらったらしいうさぎの写真が、隙間なく貼られている。
時間が早かったせいか順番待ちの患者はおらず、幸いすぐに診察室にとおされた。

『どうされましたか?』 診察にあたったのは、優しげな若い女医さんであった。
「急にグッタリへたり込んでしまって、餌を食べようとしないんです…」
アタシが症状を説明する間、医師はもんを膝にのせ、腹を手でそっとさぐった。
『触ってみたら胃の辺りがとても張っているんですよ。今、毛が随分抜けてますよね。
 多分これを沢山飲み込んでいるせいで、苦しかったんでしょうね』

高繊維質の牧草やパパイヤを意識して与えていても、毛球症は避けられなかったか…。

「一日に何度もブラシをかけているんですが、とても追いつかなくて。
 あの、摘出手術になりますでしょうか?最近、下痢もよくするんです」
『硬い大きなしこりには触れませんから手術の必要はないでしょう。
 紋次郎ちゃんは甘いもの好きですか?』
「は?はい、好きですけど…」
『じゃあ、甘いシロップのおくすりを出しておきます。餌を食べないようなら
 強制給餌も必要です』

 『蠕動促進』と『食欲増進』の薬。 

以前別の病院でもらった薬を、注射器で飲ませようとして失敗した話をすると
医師はスポイトに薬を吸い取り、飲ませ方を実際にやって見せてくれた。
具合が悪いせいもあるが、もんはここでも従順にされるがまま。
そして首筋の皮をつままれ、皮下注射をブスッ!目をいっぱいに見開くもんΣ(@o@;
そのあと爪も切ってもらった。素早くパチンパチンと鮮やかな手つき。ほう、プロは違う…。

待合室に戻ると、いつの間にかうさぎを連れた飼主が大勢来ており、ソファがうまっている。
看護婦さんがアタシに椅子をすすめ、強制給餌のやり方をビデオで見せてくれた。
アタシだけでなく、他の飼主さんたちも皆、首をよじって画面に注視する。
『じゃあ星野さん、紋次郎ちゃんに薬を飲ませる練習をしてみましょう』

…えっ?今ここで?σ(^^;

こうして衆人環視の中、『紋次郎ちゃん』を膝にのせて実演を披露する羽目になる。
みんながじっと見ているのでやや緊張。しかし、うさぎ飼いとしては有益な経験であった。
もんがこれまでかかったのは犬猫病院ばかり。異端の患畜の飼主にここまでの指導は
望むべくもなく、やっぱり餅は餅屋、うさぎにはうさぎ病院だ。ありがたやありがたや。

 レシート。もんは保険証ないから実費だもんな・・。

5〜6,000円はかかるだろうとふんでいたが、初診料を含め、何と8,000円を超えた。
まあ丁寧に診てくれたし、もんが助かるなら安いもの…。とは言え予想外の金額だなぁ。
(因みに、もん自身はペットショップで3,980円で売られていた。ばっ、倍じゃん☆)

家に着き、キャリーの扉を開けると、もんは意外とすんなり這い出してきた。
そしてピョンピョンまっすぐケージに跳び込み、やおら牧草をモリモリと食み出すではないか。
ひえっ!もう薬が効いたのか?早いな(-_-;)
お前は誰に似たのか知らないが、まったく効き目の分かりやすい奴だね。
ともあれ、ラビットクリニックの先生に大感謝なのである。

 遠出して腹減ったんか?

もんの食欲は盛大に回復し、ビデオ学習も空しく、強制給餌の必要はなさそうだ。
お前さては仮病だったんだろう。そう思いたくなるほど、奴は何もなかったように跳ね回る。
こたつの中で、足に冷たいものがコロコロ触れた。やったな…黙ってりゃ21粒も。

 えへ。イッパイうんこしちゃった♪
   
寝ずの看病明けなのですぐに寝てしまいたいが“白い影”(再放送)と“弟”を見なければ。
そんなこんなで、元気になったもんと遊んでいたら、また深夜になってしまった。

↓全快バリバリでけろりとしてます。さんざん心配かけて…(^_^メ)       


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