睦月の戯言御伽草子〜雪の一片〜 Copyright (C) 2002-2015 Milk Mutuki. All rights reserved
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初めは宿中うろうろした。 宿の裏には川が流れていて、鼬が船頭をしている。 残念ながら、のせてはもらえなかったけれど。庭は広いのか狭いのか・・・・。これだけ毎日雪が降っているのに、露天の横には、ずっと梅が咲いている。春雷がなると、桜まで咲くらしい。これは、これからの楽しみだ。
「お客さん、お昼の用意できましたよぉ。」 花が呼んでいる。 「ここにいるよぉ〜。」 窓から、渡り廊下に向かって叫ぶ。すると、花は、キンキン声で 「早くしないと、下げちまいますからネェ」 と、言いながら笑って忙しそうに立ち去った。 「では、昼にしますか。」 主人も立ち上がったので、部屋に戻る事にした。もちろん主人はこれからまた忙しいのだ。 「ここで、働こうかなぁ。」 「いいですけど、、、むずかしいかもしれませんよ?」 と、また笑っている。 「どうせ、みんなの後うろうろついて歩くんだし、なんとなく仕事もわかるし。」 「黙ってみてる方が楽ですよ。」 そういって、主人も調理場へ入っていった。彼は、午後から宿の入り口で客を迎える。たいていが、近くの住人で世間話や悩み相談らしき事を話に来る。主人は、飲み物を用意しお茶菓子を出しいつもの、笑顔で話を聞いている。聞いて貰うだけで満足と言う顔でみな帰っていく。聞き上手って大事なんだなって毎日実感する。
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