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■ ミュウー (第一章)【�供曄�
(2)
家の近所にある、『こもれび公園』についた僕は、これといって、遊ぶ相手もいないので、四人乗りのブランコに、ひとりでゆられていた。
向うの広場では、何人かのクラスメイト達が、楽しそうにサッカーボールをけっている。
僕は横目で、それをみながら、
「土曜日なのに、つまんないなぁー」
と、小さな声でつぶやいた。
すぐ横では男の子が、お父さんと、楽しそうにキャッチボールをしている。
―僕が二年生のころまでは、ボクのお父さんも、魚市場が休みになると、よく僕と遊んでくれていたんだ。お母さんも、毎日家にいてくれていた。そして、お母さんのおなかに赤ちゃんができて、僕は、飛び上がってよろこんだんだ。
一人っ子の僕に、弟か妹が出来るんだもの。それは、それは、とても楽しみだったんだ。
でも、ちょうどそのころ、お父さんに、ちょっとした知り合いの人から、
「半分ずつお金を出し合って、レストランをはじめないか?」
という、さそいが有ったそうだ。
レストランの経営は、料理好きのお父さんの、昔からの夢だったらしく、お人好しのお父さんはすぐにその話に乗ったそうだ。
店を作る資金をかりるための、保証人になったお父さんは、その人に、お金だけを持逃げされてしまい、レストランの夢はやぶれ、どうやら、たくさんの借金だけが、のこってしまったらしい。
お母さんはそのショックで、赤ちゃんを、流産してしまうし、住んでいたマンションは、家賃が払えなくなって、追い出されるわで、あのころは、お父さんも、お母さんも、毎日、毎日、ケンカばかりしていた。
お母さんの伯父に当たる、文也伯父さんが相談に乗ってくれて、とりあえず借金を、ぜんぶたてかえてくれたらしい。
だけど、それから、そのお金を、少しずつ、伯父さんに返すため、文也伯父さんのレストランで、二人して働くようになったんだ―
「ア〜。つまんないよぉ〜ッ!」
僕は、もう一度、今度は大声に出して、ボヤいてみた。
僕は、消極的なせいか、友達もあまりいない。皆と遊びたくても、ことわられるのがこわくて、なかなかさそえないんだ。
それに、僕が運動オンチのせいか、皆で野球やサッカーの約束をし合っていても、ちっとも僕には誘いがないんだ・・・・・・。
「君、たしか、哲朗君・・・・・・だったよね?」
僕の名前をよぶ声がしたので、ハッとしてふりむくと、そこには良夫君が、立っていた。
「あ・・・、良夫君・・・・・・」
さっきのボヤキが、良夫君に聞かれてしまったのではないかと思い、僕は少し顔を赤くした。
良夫君は、つい最近、僕のクラスに転校して来たばかりの子で、先生が、僕達に、はじめて良夫君のしょうかいをした時、たしか、『矢崎君は、家の事情があって、お父さんと二人だけで、この松本に引越して来たのです』
と言っていたのを、僕は思い出した。
良夫君が転校して来てから、一週間ぐらいしかたっていないので、僕はまだ、あまり話をした事もなかった。
「ねえ、乗っても・・・いい?」
良夫君が聞いたので、僕はあわてて、
「うん、もちろん」
といって、ブランコを止めてあげた。
良夫君は大急ぎでブランコに乗りこむと、
「僕、矢崎良夫。僕のアパート、この近所なの。あらためてよろしく」
と、かしこまって、あくしゅを求めてきた。
僕もつられて、
「僕は、小山(こやま)哲朗(てつろう)です。僕の家も、すぐそこなんです」
と、きんちょうしながら、手をにぎった。
二人は目を合わせたしゅんかん、
「プッ!」と、ふきだしてしまった。
「へんだよ・・・なんか、大人のあいさつみたいだね・・・・・・」
「うん、そうそう、名刺(めいし)かなんか、交換(こうかん)しちゃってさぁ・・・・・・」
「ホント、ホント・・・・・・」
僕達は、すぐにうちとけて、仲良く話しをしはじめた。
話をしているうちにわかった事は、良夫君は、今まで、両親とおばあちゃんの四人で、横浜の家で、平和に暮らしていたそうだ。
良夫君のお父さんに、この松本への、短期間の転勤(てんきん)命令(めいれい)が出され、しょうだくした直後(ちょくご)、お母さんが、『胃(い)癌(がん)』という、とても重い病気にかかってしまっている事がわかり、横浜の病院で緊急(きんきゅう)に手術を受けたそうだ。
良夫君のお父さんは、転勤をことわったんだけれど、もう会社に受け入れてはもらえなく、しかたなしに、おばあちゃんに、お母さんの世話をまかせて、二人だけで松本に来たのだという。
「僕は、ずっと、お母さんのそばに居たいって言ったんだけど、おばあちゃんも、もう年だし、僕の世話と、お母さんの世話とじゃ、あまりにも大変だからって、僕はお父さんと二人で、松本に来たんだ・・・・・・」
良夫君は涙(なみだ)をうかべながら、お母さんの事が心配(しんぱい)でしかたがないのだと、僕に話した。
「そうだったんだ・・・・・・。良夫君の家は、もっと、大変なんだね・・・・・・」
そして僕も、家の借金のせいで、いつもひとりぽっちで、さみしい毎日を送っていたことなどを話して聞かせた。
でも、良夫君に比べたら、僕のなやみなんてちっぽけだな・・・・・・と思えてきて、僕は少し、はずかしかった。
「ねえ、僕のこと、『ヨッチ』って呼(よ)んでよ」
良夫君は、ニッコリ笑ってそういった。
「えっ? ヨッチだって?」
僕は思わず笑ってしまった。
良夫君は、僕が笑い出した意味がわからずに、(?)という目で、僕を見ている。
「アッ、ごめん・・・・・・。じつは僕も、にたようなあだ名なんだ。だからおかしかったんだよ。僕の事は、『テッチ』でいいよ。お母さんが、そう呼んでるんだ・・・」
「へぇー、テッチとヨッチなんて、なんだか双子(ふたご)みたいだね」
そういいながら、ヨッチが笑う。
それから僕達は、時のたつのもわすれて、いろんな話をし合った。
辺りはもうすっかりと、夕焼けにつつまれていた。
― 次回に続く―
2002年06月01日(土)
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