気分刊日記

2003年05月17日(土) 石油日記

 開口一番、『オイル』を観て来ました。で、感想は後程。ずっと調子悪いです、このまま生誕記念日を迎え人生が3/1-10世紀に成るのかと思うと先が思い遣られます。なんてことを言いつつそんなに先きは要りません。良い感じで先を見れればオーライです(窪塚風)。
 毎度のことながら、週末は猛烈に堕落して15時起き位になります。きちんと家事をしているとすぐに時間が来てしまいます。本当は『オイル』の後にレイトショーを観ようと思っていたんだけど、駄目だね。観た意識をそのまま持ち帰らなきゃいけないと思ったもん。で、地元帰って来て友人と飯喰ってダーツしてカラオケ行って終了。

 NODA MAP第9回公演『オイル』:近年の野田芝居を観ると必ずその時とその数日思う事は“ああ、もっと頭と身体を使わねば・・・”だ。無論彼の芝居からはその才気は止めどもなく溢れ出て、頭のイイ人は違うなぁと思うことしきりなのだが。それが頭でっかちではなく身体にも伝わっているのが十二分に感動させられる。やはり、桁違いに人間力が勝る人の創造物は、日常のカンフル剤としてえらく効果的なのだ。

 ただ、芝居の題材や、得に選ばれた‘言葉’がえらく生生しくて戸惑う。そして、その言葉を使い差し出されるテーマも「パンドラの鐘」よりもずっと具体的なので直接の感想はもう一度反芻してみなければ吐き出せない。

 なので、役者とかの事を言うと、先ず、舞台始まった時の松さんが一瞬深津ちゃんぽく見えた。でも、進むに連れて作為的な面や何かがおりる様なオーラは、あ、松たか子だとしっかりと思わされた。深津ちゃんが降ろす狂気はどちらかと言うと悪戯っぽい所も有るジャック・ニコルソン的な印象が有るのだが、松さんのはヒットラーとかベニチオ・デルトロ様な生生しさが出る。ただ、こういう役者は野田さん好きだろうなぁと思った。藤原君はその声と役の捕らえ方が、こんなにしっかりした人なのか!と驚かされ、蜷川のでなんだなぁと感じる所がしばしば。橋本さんは初見なので上手いしか解らない。はいりさんとか小林聡美さんはベテランだなぁと思わせる、演出家にも合わせつつ自分の味がしっかり見える。一番驚いたのが山口紗弥加、昔ッから好きだけどここ迄声が出て動ける人だとは思わなかった。もっと年期を積むとコメディエンヌとしては「あぶデカ」の浅野温子は軽いでしょ。親友(だたと思う)のともさかりえよりとにかく身体が全然舞台向き。あとは、拙者ムニエルによく客演する小手さんが結構頑張っていたのは嬉しい。あと、男性では山中崇がきになった。衣装も立たず退かずで非常によかった、と、思ったらワダ・エミ!?先日のヒーローでも印象は良かったので実は私はワダ・エミの服が好きかも、と思った。音楽は「カノン」お思い出させる。舞台美術は前回の「桜の森の満開の下」を思い出したけど同じじゃないみたい。
 
 ああ、どんなにテーマが辛いモノでも、野田の芝居は私を日常の惰性から、思考する人間の本質を、確実にサルベージしてくれる。これは、アイデンティティを再確認する作業も含めて、自分が自分であるために必要不可欠で、自分と言う人間として生まれて来たのに、日常の生活に流され、自分も人間も見失っている事を気付かせる装置として1年に1回は利用しなければいけないと再認識した。映画で言うと黒沢清が最近そうです。


 < 過去  INDEX  未来 >


73k [MAIL]