気分刊日記

2007年05月01日(火) 夏目漱石が活躍する日

そうです、今日は映画館の窓口で夏目漱石が大増殖する映画の日です。でも、カレンダー的には普通に仕事がある日でもあります。どちらをとるか、それが問題です?!で、取り敢えず両方とって見ました。

朝一から渋谷で『恋愛睡眠のすすめ』『あしたの私のつくり方』の2本を見て、午後会社に出社してメールチェックほか2時間程仕事してまた渋谷に戻って『リンガー』『明日、君がいない』の2本を見ました。夜中は地元で3時くらいまで麦焼酎をちびちびと。

恋愛睡眠のすすめ』・imdb
流石、妄想大臣ミシェル・ゴドリーのアイディアてんこ盛りって作品です。その目眩く目紛しさが朝一だったこともあって、眠気を誘い睡眠映画鑑賞に成りそうなこともしばしば。しかし、お話的には主人公の妄想&現実の暴走っぷりがちょっと身につまされる様な気もして、なんとか最後まで付いて行きました。

今回みたいな妄想メルヘンロマンチックは、バランスを崩すと変質的なキ○ガイ映画かはたまた独りよがりの実験映画に成り果てるのですが、その辺を大いにカバーしていたのがシャーロット・ゲンズブールの可愛さ(この可愛さは近年の宮沢りえにも通じる)ですかねぇ?でも、フランス的ユーモアってのも日本人には微妙なので、口コミとかが出回ると、今後の興行的には失速してゆくのじゃないでしょうか?

あしたの私のつくり方
映画的には終始前向きな描写で青春を描くのですが、私は途中で「なんて恐ろしい話だろう」って思いました。だって、14歳の少女が一人の人間の人生(日常)を想い通り操作してしまうのですから。もちろん、操作されていた方も自分のアイデンティティの喪失に気付いて自分の言葉を回復すして、前向きな終わり方をするので安心できるのですが。あと、“キャラを演じる、使い分ける”と言う現在の日本におけるコミュニケーションのあり方を描いている点は十分考えさせられると思います。

で、注目の成海璃子ですが、市川監督の「小6から高1までを演技できる年齢(14歳)」とはよく言った物です。その14歳同士でも共演の前田敦子と比べて、成海璃子はオーラでまくりです!この歳でどんだけ完成されているんだと・・・。

今後も容姿や体型はガンガン変わるとは思うのですが、今のこの娘は一つの完成系です。ただ、コメディエンヌの才能があるかどうかがまだ未知なので、その辺を上手く引き出せる作品にでてもらいたいです。その上で、2つ年齢上ですが、金村美月や志田未来なんかと共演させたら恐ろしいドラマが出来そうです。ただし、この3人は天才肌の女優でタイプが被ってしまうので、もう一人くらい天然系の女優が欲しいですね。「ジョゼ虎」の頃の上野樹里みたいな娘が。

リンガー!替え玉☆選手権』・imdb
おバカ映画万歳です!ストーリーラインとしては、バカ映画版「ロッキー」ではないでしょうか?実際、それ程差別ネタが目立たない、障害者パワーが炸裂していて寧ろ普通の映画でした。
ジョニー・ノックスヴィルの演技は微妙にジム・キャリーっぽい、ジェリー・ルイスっぽく見えることもしばしば。まあ、体はって笑いを取る点ではジョニーが上ですね。障害者の方達の方がキャラが立っていて面白いし、ジョニーはまだ、それを弄りきれる程の役者じゃないんですよね。

フォックスは本作や「ボラート」など体質とは真逆の作品も平気で作って、ビデオスルーに成る作品(主にコメディー&恋愛)もたくさんあるけど、年に数本“バカ映画の心”を持つ担当者が劇場公開までこぎ着けてくれるのですよ、ありがたい。でも、3週間限定ロードショーで、2週目からいきなり2回上映に格下げされてる状況は、せっかく劇場公開してくれたのにこういうのもなんですが・・・これはやっぱりビデオスルーレベルかな?と思いました。

明日、君がいない』・imdb
極論を言うと「あしたの私のつくり方」と本質は同じなんじゃ無いかと思う。ただし、状況設定がローカライズされているので、テーマのあぶり出され方が異なる。

本作では、最終的に「誰が自殺する?」と言ったことも映画に集中させる求心力なのだが、殆どの登場人物が非常に重い悩みを抱えていて、観ている方にもこんなに苦悩するなら自殺してもおかしくないと感じさせる。しかし、仮に彼らの誰か自殺を選ぶのは“逃げる手段”としての自殺であり、本質のカモフラージュでしかない。

で、見えてくる本質って言うのは・・・自分自信のアイデンティティが形成されていない人(ここでは子供)は、他者と自分の距離によって自分の位置を確認して、他者から観た自分でアイデンティティを形成しているため、他者に観られていないと、いとも簡単に自分の存在・アイデンティティを見失って崩壊してしまうと言うことではないだろうか。引き蘢りなどは周囲との関係が築けずアイデンティティが崩壊しそうな人が、崩壊を防ぐために本能的にとる行動で、殻に閉じこもると言う以前に、殻が無いため中身が垂れ流しに成って周囲に溶けて無くなってしまうのを防いでいるのだ。

最後に、19歳が撮った映画としては脚本はもとより、編集・構成が図抜けてる。視点の切り替えタイミングや流れが途切れること無くスムーズでストーリーもきちんと進む。ガス・ヴァン・サントの「エレファント」なんかより余程観易く、無駄が無い。しかしまぁ、アメリカだと思たらオーストラリア舞台らしのだが、黒人が少なかったりドラッグがあまり絡まなかったり以外は、その病みっぷりは凄まじいのですな。日本もいずれこう成ってしまうのだろうか。


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