息が苦しくなるのは、いつも僕の心臓が少しぎこちないからだ。
「また電話します」の一言が重い。 僕は別にあのひとがいなくても生きていくさ。きっと。 僕は自分の幸せなんて思ったことはない。 ただあのひとが幸せだといいと思うだけ。他の誰もが幸せだといいと思うだけ。
羽根をもがれるような痛み、を思う痛み。 誰が浮気なんてしたいというのだろう。
電話でさえこの心はやわらかく崩れて、形を成しはしないのに、 どうして書き綴る文字にそれが宿ることができるだろう。 どうして恋ができるだろう。 この言葉にできるのは、 あのひとを惑わすだけ、 あのひとをあのひとだけを。
おそろしいことをしている 今日も おそろしいことをしている 少しずつ見透かされる心の裏で 今日も おそろしいこと を している。 僕が蝕まれるのかあのひとが蝕まれているのかは知らない。 ただ薄着ばかりしているこの身体は少しずつ冷えて、 あのひとの指を暖めるための温もりを忘れていく。 べつに忘れられるなら忘れてしまえばいい。 それならあのひとはきっと安らぐ。 きっと、 想い続けることの純粋さに酔うことを自分に許す。
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