不意に、つきはなされるてのひら の 感触、今も。
舌にざらついて苦い澱のように、 (それはたった一瞬のことだったのに) 記憶からデリートするための内海に溶けきらずに 河口に浮かぶヘドロのようにふわふわと 浮いている。
あぁ、これが つみうみだ
と 悟ってしまうより他に ないのです。
*
やわらかに やわらかに話す、 いつか いつかの朝に 死んでしまってもいいように、
後悔しないように生きる のと、 後悔する事をしないように生きる のは違う。 ただ あのひとがいない と 真っ暗な部屋の中に息を殺すのは、 いくら割り切ったつもりでいても 忍ばせておいた毒薬を静かにあおる時のように冷えた汗を 指先が宿す。
暗がりのなか壁を見つめてから目を閉じる、たとえば 最期のときに目に映るのはそんな無機質なモノであることを僕は知っているのだと思う。 目を閉じて おちていく、 死は いつも公平で嫉妬の入り込む隙はない。それが わずかのあいだ僕を安堵させる。
それからしずかに、 今日ついた嘘のすべてを詫びていく。
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