2003年09月04日(木) |
バッハ小フーガイ短調。 |
扉の閉じた隣の部屋で、このあいだ替えた着信音がずっと鳴り続けているような錯覚。 もう確認しに行くのも疲れてやめてしまった。
ことばなんて曖昧なものにすがっていつまで生きているつもりだろう。 いや、曖昧だからまだ生きていられるのかもしれない。 確固としているならそれだけ、嘘をつくときの痛みも鮮明になる。 曖昧に、曖昧なままで相手に判断を丸投げしているからまだ知らない顔ができる。 そして別にいい。それならそれで、少しずつ真綿を絞るように退路が狭められていくのを達観した目で見ているだけ。
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睡眠薬、ほんの一粒を飲み込む。 あのひとはおやすみも言わせてくれなかった。
目を閉じると泥のような眠り。首筋に何か重くまとわりつくような。 なんで僕は徹底した嘘つきでいられないんだろう。 ハリネズミみたいに、他の誰も近付けず、誰にも近寄れず、けれど独りでは寒くて死んでしまうんだ。 きっと。
目覚めは最悪。 あと30分遅かったらまだマシだったと思うのに。 それでも家事をてきぱきする。兄が帰省していたあいだは母親がせっせとやってくれていたのに、兄が東京に帰ってからはぱったり雑になった。
あのひとはゆるさない。 いつも。 だから僕は畏れる。 けれどだからと言って僕が悪くないわけではない。
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