握りしめた手はいつになく熱くて、僕は人ごみのなか不安に駆られる。 遠くから漂ってくるのは切なげな哀しげな視線。 何度も僕は間違える。 目の前の誰かに対する圧倒的な恋。 そしてこのひとではなかったと気付く非情な瞬間。 哀しむ誰かを胸に抱きしめる。 あなたの手を引いて、あるいは導かれて人ごみを抜けていく。
神様、どうか今だけは僕を見ないでいてください。
あなたの顔がわからなくて僕は途方に暮れてしまう。 そして僕はここにあるものが愛情ではなくて一瞬の天の啓示のような狂気だと気付いてしまう。
あなたが好き、それで?
あなたの目が哀しみに曇っていくのを僕は見てしまう。 その切られるような痛み。 喉の底が干上がっていくような焦燥感。 これが否応のない愛情なら僕を殺してしまえばいい。 あるいはただ一瞬のゆらめきなら何もかも壊してしまえばいい。 けれど僕はどこかで悟ってしまう。
あぁ、また捕まってしまった、と。
もうどこへ逃げてもおしまいなのでした。
ひどいひと、
ひどいひとだあなたは。
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