七夕の日、僕は高いビルの上から熱気にうだる外を見下ろして 大阪に行きたいと思っていました。 揺らぐ陽炎の中に沈んでいるようなトタンと赤錆と路地の町。 息をするたびに肺が焼けそうになる そんな濡れたように色褪せた町並みを 僕はさまよいたいと思ったのでした。
ビルの上からは大文字が綺麗に見えました。それも二つ。 送り火の夜は此処に来たいね と ヒトを亡くしたことのない僕なら言ったのでしょう。
7月7日、梅雨を忘れた空では織姫が 年に一度の僅かな逢瀬のため天の川を渡ってゆきます
明日も晴れ、けれど最後まで 僕はビルの谷間を見下ろさず一日を終える
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