今は何も定義できない、
ちいさくなった蝋燭から火を移して、ひとは白い蝋燭を入れ替えた。 素朴におおきな背の高い蝋燭を、灯台のように見つめて 夜はゆっくりと、忍び足で終わっていく。
感情を、 動かしてはいけないと思えば涙が映画館の暗闇に溶けた。 不可解なのはこの、夜の安堵感だ。
何度も波が、よせてはかえすのを感じる。 何度も、 何度も、 打ち寄せては引いてゆき、 すこしずつ僕の中の何かを高める。 ただ一輪の、美しい名の花が咲いているのを感じる。 波に、 ひかれるように揺られたゆたいながら、花は浮かぶように咲いて、 咲いて。
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