ゆびさきが、きいんと 冷えてしまったので、小さなカフェへつれていってもらう。 おだやかな場所。 元町の空はあおく翳ってきて、だけど夕暮れのむらさきはとても、ゆるぎなくきれいで。 頬が、自然に赤くなったのを見て、首を傾げて笑う。 指先がひそやかに、あたたかさを取り戻して、僕は少しだけ必死に、ふるえだすゆびを抑えなければならない。
あきらめたら、
いいよ。
そういうのはかなり、理不尽だと思っても、困ったように笑いながらいうのを見ると僕は目を逸らしてしまう。
愛情、なんかじゃなくて
それだけで胸はかくんと冷えるのだけど。 愛情が間違いのないものである必要はないのだと今さら自分に言って聞かせたりしている。
たぶん、 あのひとも、 もう わらわない
祈るも祈らないもなくて愛している。 そういうの、知っていても。 世界はまっしぐらに進んでいて、まっしぐらに落ち続けている。 自転と公転を繰り返しながら世界が落ち続ける淵に僕は立って、自由落下の過去と未来を甘受する。
朝はもう、 遠いんだ。
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