2006年04月02日(日) |
この世のすべての うつくしいものを |
風邪をひいた。 うちから内科の医者に行くまでの道は自転車で約5分。 帰り道はしんどくても少し遠回りをする。 ふるさとは遠くにありて思うもの、と言うけれどここは、この場所の春は、目に新しく美しい。 ミモザの咲きかけた並木道。 雪柳。 白木蓮。 そして桜。
熱に、どこか眠ったような頭で、桜の薫る橋の上を自転車で走る。 たしか去年も、同じようなことをしていた。
あのひとに会いに行く約束と、あのひとに来てもらう約束を、していた。 うん。 もう叶わない。 たぶん最後の、『もしかしたら守れたかもしれない約束』だと思う。 もうこれ以上先のことなんか、ひとつも、おぼえていないから。 だから少し、また僕は軽くなる。
うん。 だからあのひとに、この美しいものを見せたかったなんて、 本当は僕はもう言ってはいけない。
だけど僕は、この世のすべてのうつくしいものを、あのひとに見せてあげたかった。
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