2006年06月10日(土) |
愛したものはいつも6月に消えるという法則 |
やわらかく降っていた雨が急に重く強く変わった。
足取りを少し速めて、僕は顔を濡らす雨を拭う。 そこに、 足元を埋める雨粒の間に、 僕はあなたの血痕を見つける。
不意にたった一粒の、赤黒い血痕を見る。
雨は立ち止まる僕の上に重く強く降り、僕はそこから行き過ぎることができない。 どこへも、行けないのだ。 やはり僕は何処へも。 それは天の啓示のように明らかな定理で、ここに僕は立ち止まるしかできない。 この心がどんなに変形しても、 どんなに自分を騙しても、 季節が巡り夜が明け1の次には2が来るのと同じように。
僕は雨がどんなに激しく降ってもその血の跡が消えないのを知っている。 それと同時に、 自分がその血の跡を消さないためならこの地面の上に這い蹲ってでも雨の止むのを待つのを知っている。 そしてそこに、 血の跡は残り、
いつか僕はその血痕があることを忘れるだろう。
けれど聖骸布のように、 忘れることを赦さないようにその跡は不意に浮かび上がり僕は足を止める。 いつの いつの日にも、 僕はただ、立ち尽くすしかない。
その声は僕の声に似ている
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