この季節になると食べ物が嫌いになるらしい。
食欲の秋、と言うけれど、薄い吐き気が喉元に満ちていてやりきれない。 食事はきちんとしている。 何事もなく。 けれど酒も飲まず車にも乗らない僕の喉元で、茶の一杯ですら拒みたい空気がせめぎ合うのだ。
キンモクセイは終わり、クチナシも散った。 今朝からきいんと風が冷たい。
ストレスか何かでこんな気分になるのかしら、と思っても思い当たる節はなし。 淋しさ、とか? そんなやわな人間でもなし。
ただ今も薄く、拒絶が喉に渦巻いている。
満月を
待っている。
十六夜の月は奇妙に大きく夜空を渡るので 僕は穏やかに眠ることもできずに目を見開いている。
皓々と、月光は夜道に僕を照らし
その光に身を焼いて 逃げていく場所のことを思う
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